日本で尊厳死をするために絶対に必要な手順とは?【リビングウィル】

介護の仕事をしていて、
どうしてこの人は生き続けないといけないのだろうと思うことがあります。

体は全くと言って動かせない、
円背気味で痛みの訴えが常にある、
排泄介助で体を右や左に動かすと痛みが表出し手が出てくる。

この方はこんな苦しみの中、
生き続けたいと望んでいるのでしょうか?

利用者さんには寄り添う姿勢が求められますが、
「死にたい」と呟く利用者さんや、
「殺して!!」と絶叫する方に接する時、
どうしても安楽死や尊厳死について考えるようになります。

寿命を延ばさないため治療を止めるのが尊厳死で、
尊厳死を実現するために必要な書類がリビングウィルです。

尊厳死を実現するためにリビングウィル(生前の意思)を文書化しておくことが大切ですが、
まずは安楽死と尊厳死について説明していきます。

①安楽死、尊厳死とは
②安楽死、尊厳死が認められている国
③日本における尊厳死の状況
④リビングウィルの重要性
⑤リビングウィルはどこまで通用するか

①安楽死、尊厳死とは

安楽死とは、薬物投与などによって死をより早く迎える「積極的安楽死」と、
延命しないで自然な死を迎える「消極的安楽死」があります。

胃ろうをすることで患者さんはより延命できる状況でも胃ろうを拒んで死を迎えることは消極的安楽死に当たりますし、
植物人間になってしまったり意識はあっても体は動かず寝たきりになってしまったり、
意識はあって体が動いても病気で痛みや苦しみがずっと続く状態になってしまった時、
「これ以上生きたくない」と本人が望んだ場合に治療を止めることで死を迎えることは消極的安楽死=尊厳死にあたります。

薬等を使って寿命を縮めるのが積極的安楽死(通称「安楽死」)、寿命を延ばさないのが尊厳死と言えるでしょう。

②安楽死、尊厳死が認められている国

薬を自分で飲んで自殺することを医師が手助けする、
自殺幇助を含めた安楽死を認めている国は、
オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、スイス、米国の一部だけ。

一方、治療中止による尊厳死が認められている国は、
米国全土・英国・デンマーク・フィンランド・オーストリア・オランダ・ベルギー・ハンガリー・スペイン・ドイツ・スイス・シンガポール・台湾・タイ・カナダやオーストラリアの一部と多くの国が採用しています。

医療制度が整っている先進国だけが尊厳死について考える機会があるのであって、
医療費が払えないケースが多い後進国では自然な死を迎えるのは当たり前となっています。

安楽死については倫理的な問題もあることから承認プロセスが非常に複雑ですが、
尊厳死については治療をやめるだけなので、
あらかじめリビングウィルと呼ばれる尊厳死を望む宣誓書を用意しておけば、
比較的スムーズに尊厳死を迎えることができます。

③日本における尊厳死の状況

日本では尊厳死が法的には認められていませんが、
厚生労働省が2007年に発行した
終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン
に、
終末期の患者に対する治療について指針が示されました。

このガイドラインで、
本人、家族、医療チームによってしっかりと議論が行われたならば、
治療の中止を含めた判断を行えると示されています。

患者本人の苦痛を和らげる処置を可能な限り行えるとしており、
苦痛を和らげる目的で投与した薬によって死に至る可能性は十分にありえます。

あくまで苦痛を和らげるが前提としてあり、
苦痛を和らげるために特定の薬を使うしかない場合、
その薬の使用許可は医療チームに委ねられます。

このガイドラインに全ての病院、医師が従っているわけではないでしょうが、
終末期について本人や家族が医療スタッフとどうしていくべきかを話し合うことで、
延命治療はするのかとか、
本人のリビングウィルはあるのかとか、
家族の見解はどうかなど、
今まで不明瞭だった部分が解消されることでしょう。

「緩和ケアはどうなっていますか?」

とか

「終末期医療はどうなっていますか?」

と聞くことで、
その病院の方針が分かることでしょう。

④リビングウィルの重要性

ここまで、
尊厳死をするためには医療チームとの連携、
リビングウィルが大切だと述べてきましたが、
リビングウィルを本人が作れるとは限りません。

『人生の最終段階における医療に関する意識調査』(厚生労働省)
の平成29年版に、
一般国民、医師、看護師、介護職員別の意識調査がありますので、
それらを紐解きながら、
日本におけるリビングウィルの普及率を考えていきましょう。

あなたは、人生の最終段階における医療、療養について、
これまでに考えたことがありますか?

この問いに対して、
医師や看護師、介護職員は8割以上が考えたことがあると回答しています。

これは現場で様々な利用者さん、患者さんを見ているから考える機会が増えたり、
他職員と話し合ったりする機会ができるのも頷けます。

一般国民では6割が考えたことがあるとしています。

どこまで考えたことがあるかというのも気になる所です。

あなたの死が近い場合に受けたい医療、療養や受けたくない医療、療養について、
ご家族等や医療介護関係者とどのくらい話し合ったことがありますか?

考えたことがあると回答した医師や看護師、介護士が8割だったにも関わらず、
話し合った事があるという人は医師でも6割、
看護師、介護職員だと5割程度というのが分かります。

私も両親としっかりと話し合ってきたかというと話せていないので、
もしアンケートに答えたとしたら
「話し合ったことはない」
を選んでいたことでしょう。

雑談のようなレベルで話はしたかもしれませんが、
自分の知識不足も手伝ってまともに話せたことはありません。

これまで話し合ったことはない理由は、何ですか?

話し合う必要性を感じていないからに医師、看護師、介護職員も含めて約3割なことにも驚きますが、
話し合うきっかけがなかったからが一番多いのが実情のようですね。

統計では5~6割となっています。

そして、知識がないため、
何を話し合っていいのか分からないが一般国民で2割となっています。

医師や看護師、介護職員はそこは少ないようですね。

私も介護職を6年程度していますが、
ターミナルケアを十分に経験してきたわけでもないですし、
リビングウィルを今まで現場で経験してこなかったため、
不明瞭な部分は多分にあります。

もし、
ご家族等や医療介護関係者等の方と医療・療養について話し合うきっかけがあるとすると、
どのような出来事だと思いますか。
(話し合ったことがある方は、何がきっかけでしたか。)

ご家族等の病気や死と、
自分の病気がきっかけで話し合うが5割~7割を占めていて、
人生の最終段階についてメディア(新聞・テレビ・ラジオ等)から情報を得た時と、
医療や介護関係者による説明や相談の機会を得た時が次点で、
2割~3割となっています。

家族に医療従事者がいた場合、
「ターミナルケアやリビングウィルってどうなの?」
と直接聞くことはできるでしょうが、
多くの人は医療従事者が近くにいるわけではないでしょうから、
そうなってくると情報を収集するためにはTVや雑誌、
最近ですとユーチューブなどのインターネット上のコンテンツで
たまたま尊厳死などのキーワードが目に入るか、
自分で調べるかしないと情報は手に入りません。

病気になるまでは病気の事を知りもしないように、
何かが起こらないと話す必要性を感じないというのも仕方のないことかもしれません。

あなたの死が近い場合の受けたい医療・療養や受けたくない医療・療養を考えるために、
どのような情報を得たいと思いますか。(複数回答可)

終末期において自分の意思が示せるとは限らないため、
今のうちに家族と話し合っておく必要があるし、
書類として残しておいた方が後々自分の意思が示せなくなった時に、
リビングウィルが参考となりますから書類として残そうという意識は大切なのですが、
一般国民は医療関係者に比べて意思の伝え方や残し方で20%も意識が違うようです。

親がいつ認知症になるか、
自分の家族がいつどのような状況になるか分からないからこそ、
終末期になにが起こるのか、
何を用意しなくてはいけないのかを考えておきましょう。

⑤リビングウィルはどこまで通用するか

日本尊厳死協会ではリビングウィルのカードを発行していますが、
会費がかかるのでお勧めはしません。

リンク先の文面を参考に、
自分で宣誓書を作るのをお勧めします。

文面を参考にして自分で宣誓書を作ってしまいましょう。

こうした宣誓書に法的な拘束力があるわけではありませんが、
治療方針の決定においては大いに参考になるでしょう。

またリビングウィルを作成しただけでは私文書扱いですが、
公正証書とすることでより本人の意思を明確にできます。

医療関係者が尊厳死宣言公正証書
(今回でいう、リビングウィルを公正証書としたもの)
を9割が参考にしたという話もあります。

もしリビングウィルを作成するのでしたら、
公正証書化する(尊厳死宣言公正証書を作る)のがベターでしょう。

①原案を作成する
②原案をもとに公証人と内容を打合せ、公正証書文案を作成する
③公証人から提示された公正証書文案を確認し、必要に応じて校正を行う
④公証役場で公正証書を作成、署名押印し完成

自分ひとりで作成するのが困難なら、
行政書士に相談するのもいいかもしれません。

一旦作成したらそれで終わりでしょうか?

本人の気が変わるかもしれませんから、
ある程度の間隔を置いて書面の見直しも必要になるかもしれません。

そしてなぜ気が変わったのかを、
記録として残しておくといいでしょう。

家族と話し合うこと、
その上で、自分の意思を示すこと。

どちらも大切な事ですが、
元気なうちはまだ必要性がないと考えがちです。

しかし人生、何があるかは分かりません。

自分のために、
家族のために、
できることをしていきましょう。

頑張りましょう(^^♪