事故を隠す理由は何ですか?【事故報告書を書かないあなたに】

過(あやま)ちを改(あらた)めざるこれを過(あやま)ちという
論語より

過ちには二種類あります。

自分の期待する結果が得られなかった単なる失敗と、
失敗後に改善する余地があったのに、
そのまま放置した場合です。

起きてしまったものは仕方がないから、
じゃあどうするかと前向きに考えられるなら、
それは次回以降、
予防策を練ることができるから、
改善することが重要です。

ところが、
間違えたことが分かっているにも関わらず、
それを放置してしまう場合もあるでしょう。

自分の担当ではないから構わないだろうとか、
今は時間が足りないから後にしようとか、
面倒だから考えるのをやめようといった理由で、
目の前に起きていることを放置した結果、
どんな問題が起きるかを2つの事例を元に考えていきます。

事例1 落薬を放置
事例2 転倒を放置

事例1

落薬を発見。
だが第一発見者となったら事故報告書を書かなくてはいけないから、
見なかったことにしよう。

これは薬をゴミ箱に捨てたらなお悪いです。

第一発見者であるはずの人が、
しかるべき対応をしなかったことに問題がありますし、
ゴミ箱に薬を捨ててしまうことで、
落薬があることを誰も知らない状況になりますから、
誰が落薬するリスクを負っているのかを把握できなくなるかもしれませんし、
どの職員のミスで落薬したのかも解明できませんから。

口腔内に薬を入れたまま職員が去った後で、
薬を口から吐き出すという利用者さんもいるかもしれませんが、
だとしても職員がその利用者さんが薬を飲めたのか口を開けていただいて、
口腔内を確認させていただくことで、
今後の対応となりますから、
その薬は誰のものだったのか、
いつ飲んでもらっている薬だったのか、
誰が介助したのかを追っていくことは非常に重要です。

そして職員によって飲ませ方を統一できていないのか、
対策を練ることで今後のミスを防ぎやすくなります。

事故が起きた際に調べなくてはいけなかったり、
対策を考えなくては行けなかったりで、
時間が結構掛かってしまうため、
事故報告書を作成するのはとても大変と感じる職員もいるかもしれませんが、
問題をなかったことにして後で発覚した場合、
職員に対する信用は失墜しますし、
なかったことにして得られるメリットは、
その職員の通常業務が滞りなく行えたということだけです。

事故報告も十分起こりえる通常業務だという認識を持っていただき、
いつでも事故報告書は書いていけるよう、
心構えをして仕事をすることも肝要でしょう。

事例2

利用者さんがベッドから落ちているのを発見。
だが外傷はなさそうだしお元気そうだから、
事故報告書は書かないで報告しないでおこう。

まず転倒の際に、
バイタル測定は行ったでしょうか?

外傷の確認は行いましたか?

本人の痛みの訴えを確認し、
他職員に連携しましたか?

事故報告書を書かないと決めた人は、
他職員に連携しなかったでしょうから、
自分だけで対処し、
問題ないと自己判断し、
なかったことにしたでしょうが、
それはリスクマネージメントの観点からも問題があります。

バイタルの値はいくつだったでしょうか?

転倒した理由は何なのか考えましたか?

次転倒しないためにはどうすればいいか考えましたか?

その方が脳内出血した可能性はありませんか?

薬の副作用なのか、
生活習慣の問題なのか、
ふらつきがあったとして、
普段から起きていたのか、
今回が初めてなのか、
環境整備はしっかりしていたでしょうか?

靴は履いていましたか?

立ち上がりの際、
何か掴めるところはありませんでしたか?

ナースコールは押せなかったのでしょうか?

ナースコールが押せないから、
一時間以上転倒したままとなっていた可能性がありますよね?

目配りはどれくらいの頻度で行っていましたか?

その方は体動が多いかたでしょうか?

自分からよくトイレなどに動こうとされる方でしょうか?

だとしたら職員が、
「トイレの際は一緒についていくからナースコールを押してください」
と毎回お声がけできていたでしょうか?

認知に問題があり指示が通らない、
または記憶力が低下している場合、
こちらで転倒のリスクを考えて、
訪室の回数をもっと多めにとるとか、
ある一定の時間帯は多めにするといった、
何らかの対策が考えられますが、
バイタルも測らず、
利用者さんの転倒の状況も分析せず、
対策も考えないのでは、
また利用者さんが同様の転倒を起こす可能性は非常に高いでしょう。

するべきことをしなかったために何かあった場合、
大いなる問題となって職員に降りかかりますから、
勝手な自己判断は厳禁です。

なぜ事故報告書を書かないと決めてしまったのでしょうか?

利用者さんがお元気そうに見えたからですか?

普段通りにお元気そうだから大丈夫だろうと自己判断したのですか?

そして事故報告書を書くのが面倒だと思ったからですか?

あるいは、
その事故が起きてしまったのは自分のせいだと言われてしまうと思ったのでしょうか?

チームプレイにおいて、
職員個人が明らかに悪いと思われる行為、
意図して利用者さんに危害を加えたというのでなければ、
利用者さんに事故が起きた場合などで、
職員が処罰の対象になるということはありません。

もし職員が決められた規則に従って仕事をしているのに、
処罰されたという現場であれば、
紛れもなくブラック企業ですので、
転職を検討するのをお勧めしますが、
今回は会社に職員に責任をなすりつけるような体質でないにもかかわらず、
職員が事故報告書を書きたくないという場合を想定します。

事故はいつ起きるか分からないため、
もしかしたら仕事終わりに事故報告書を書かなくてはいけないかもしれません。

事故報告書は早い人でも15分以上かかりますから、
慣れない人だと30分以上かかるかもしれません。

職場の他職員がフォローしてくれる場合ならば、
そのフォローを受け入れつつ事故報告書の作成ができますが、
大抵は時間の空いている時に作成することが多いでしょう。

その時間を捻出できるのかという問題と、
まずバイタル測定など最低限のチェックを行う必要があります。

忙しい中、新たなタスクが発生するのは心理的にも負荷がかかりますが、
あなたにその心構えができていたでしょうか?

今一度、事故報告書を書くにあたって段取りはどうすればいいか、
いつならば書ける時間帯なのか、
他職員にフォローを頼める状況なのかなど、
先輩職員に聞いてみましょう。

怒られるのが嫌だから事故報告書を書きたくないなど、
書かない人の理由、状況は様々でしょうが、
自己分析を行って、
自分がどういう状況ならば書くのか、
そしてその状況にするためには何が足りないのかを考えることが、
責任ある職員になるための大切な一歩でしょう。

失敗して反省したり、
事故を隠して自己嫌悪したりするかもしれませんが、
次はしないようにしようと決めることが大切です。

頑張りましょう。