介護現場で頻発する窒息・誤嚥事故!どう対応する!?

先日、職場の夕食提供後、すぐに利用者さんから
「職員さん、職員さんちょっと来て!」
と言われてそちらに振り向いたら近くの利用者さんが咳き込んでいて、
利用者さんの背中を叩いていたら看護師さんがすっ飛んできて、
浴室での吸引となりました。

その方は車椅子の方だったので、
車椅子のまま利用者さんを浴室に誘導して、
吸引を5分~10分ほど行ったことで、
利用者さんがようやくむせ込みがなくなり落ち着かれましたが、
そのまま食堂で安静にされるよう指示出しがあり、
他の利用者さんと同じように座位でいていただきました。
夕食時は看護師さんがいるため吸引ができましたが、
これが朝食だったらと思うと今でも緊迫感が蘇ります。

この利用者さんは翌日から、
普段と同じような食事形態で普段通りにお食事を召し上がっていて、
食事形態が悪かったのであれば今後も同様のことが続くでしょうが、
次いつむせ込みがあるのかは分かりません。

近くに異常事態を教えてくれる利用者さんがいたことで、迅速に職員が気づくことができましたが、
窒息時の対応に自分が全然対応できていないというのが露呈しましたので、
改めて対応方法を書いていきます。

①窒息に気づくには
②窒息の対応方法
③窒息死で訴えられた際、記録が不適切だと不利になる

①窒息に気づくには

あなたは食事介助の際、
どれだけ利用者さんの観察をしていますか?

利用者さんの人数が多かったり、
食事介助をしなくてはいけない人が多かったりすると、
しなくてはいけないことが増えますので全ての利用者さんを満遍なく観察するのは忘れがちになりますが、
利用者さんはいつ状態が変わるか分かりません。

利用者さんの顔色がよくない、
苦しそうな顔、
声が出せない、
息ができない、
チョークサインがあると、
何よりも優先してその利用者さんの元に駆け付けなくてはいけないでしょう。

チョークサインとは、
異物が気道につまって窒息した際に人間が自然に行う行動のことを言います。

喉に手を当てるこの行為は、
異物が喉に詰まって息ができない状態であることを示す万国共通のポーズです。

自分がもし喉が詰まった場合でもこのチョークサインをすることで周囲の人に、
いつもと明らかに状況が異なること、
苦しそうにしていること、
喉が苦しそうな事を伝えることができます。

②窒息の対応方法

食事中にチョークサインが見られる利用者さんがいた場合は、
「喉が詰まっていますか?」
と声かけしてみましょう。

「息ができますか?」よりも
「何かが喉につまりましたか?」の方が状況を特定しやすいので、
利用者さんが対話が可能な方であれば
「喉が詰まったんですか?」と聞いてみてください。

利用者さんが頷いたり、声が出ないなど、
窒息してしまったと確認ができたら、
気道異物による窒息の応急処置を行います。

周囲に職員がいる場合は大声で職員を呼び、
看護師さんに報告してもらうようにしましょう。

看護師さんがいなければ管理者か救急車を呼ぶかを迅速に判断してください。

また施設にAEDがあるならばAEDを持ってくるように依頼しましょう。

これから行う腹部突き上げ法(ハイムリック法)か背部叩打法で、
利用者さんが落ち着かれたら管理者報告でもいいでしょうが、
異物が取れても咳が続くような場合や、
他に異物がある場合、
意識がない場合はすぐさま救急車を呼びましょう。

意識がある場合は、
「咳をする」よう指示をしましょう。

声がでるほどに大きな席が出せるならそれを続けるようにして、
気道内の異物の除去をしましょう。

異物の除去方法には腹部突き上げ法(ハイムリック法)と背部叩打法がありますが、
どちらがいいというものではありません。

どちらかを繰り返し行い、
効果が見られない場合はもう片方を行ってください。

ただし、
腹部突き上げ法は肥満者には効果が見られるエビデンスがないとのことなので、
背部叩打法を行いましょう。

【腹部突き上げ法のやり方】
1.利用者さんの背中に回り、腰に手を回します。

2.どちらかの手でおへその場所を確認します。

3.もう一方の手で握り拳をつくり、
親指側を利用者さんのおへその上、
みぞおちよりは十分に下のあたりに当てます。

4.おへそを確認した手で、
握りこぶしを作った手を握ります。

5.すばやく手前上方に向かって、
利用者さんを圧迫するように突き上げます。

注意:救急隊員に伝えよう

内蔵が損傷しているかもしれないため、
腹部突き上げ法を行った場合は、
その旨を救急隊員に伝えましょう。

救急隊員が来られないのだとしたら、
病院での診察をするようにしましょう。

【背部叩打法のやり方】

利用者さんの背中を後ろから、
手のひらの手首に近い固い部分で叩きましょう。

叩く位置は、
利用者さんの左右の肩甲骨の間あたりを強めにしましょう。

【利用者さんの意識がない場合】

利用者さんの意識がない場合は、
心停止と判断して心肺蘇生法を実施しましょう。

心肺蘇生を行っている間に、
異物が見えたら手で取り除きましょう。

見えない場合はやたらに口腔内に手を入れて探さず、
心肺蘇生による胸骨圧迫やAEDの使用を優先しましょう。

探さない理由は、
見えない位置にある異物をさらに喉の奥に押し込んでしまうのを防ぐためです。

また、異物を探すために、
胸骨圧迫を10秒以上中断してはいけません。

心肺蘇生法の詳細については割愛します。

③窒息死で訴えられた際、記録が不適切だと不利になる

平成19年6月26日に福岡地方裁判所で判決となった事案を紹介します。

利用者であるXさんが食事中に誤嚥を起こして、
それが原因で亡くなった事案で、
食事介助を担当していたYさんが被告として訴えられました。

争点は、
嚥下状態が悪い時があるのにおにぎりを提供したのが問題なのかと、
義歯をつけるようお願いしても断られてしまうため装着させられなかったのが問題なのか、
見守りを怠ったのが問題なのかという3点です。

Yさんと特別養護老人ホーム側に2882万円の損害賠償金を支払わなくてはいけない判決が出た理由が、
30分間見守りを怠ったと見做されたからですが、
Yさん側はXさんの元を離れた5分後にXさんの元を訪れ、
Xさんの様子を確認し、
さらにその5分後に誤嚥しているXさんを確認し、
食物残渣を除去したなどと証言し、
さらに、
それに沿うような看護日誌を証拠として裁判に出しています。

にもかかわらず、
裁判所はこれらの主張を認めず、
30分間、
一度も見守りをしていないと認定をしました。

なぜYさん側の主張は認められなかったのでしょうか?

以下、引用します。

A次郎さん:
なんで看護記録に書いてある通り裁判所は認定してくれなかったのですか。

それじゃあ、
せっかく記録に残していても意味がないじゃないですか。

中沢弁護士:
必ずしもそういうわけではありません。

今回は特殊な事情があったのです。

というのも、実はその看護日誌は、
事故の部分だけ二重線で訂正がされたり、
1行の欄に2行のコメントが記載されたりしていたため、
看護日誌の記載内容が逐次作成されたものではなく、
後になってまとめて記載されたものであると裁判所に認定されてしまったのです。

そうすると、
事故を起こした当事者が事故後に作成したものですので、
その信用性の判断は慎重にならざるを得ないとされ、
その他の証拠と総合的に考えると、
Yさんが主張している内容(看護日誌の内容)の事実を認定するのは難しいという判断になりました。

A次郎さん:
後から訂正したり、
追加したりするのが良くないのでしょうか。

中沢弁護士:
そうですね。

できる限り小まめに記録を残すことが非常に重要です。

今回のような加筆・修正などがない他のケースでは看護日誌通りの判断を示した場合もたくさんあります。

A次郎さん:
そうなんですね。

そう考えると小まめに記録を残すことは重要なのですね。

中沢弁護士:
そうです。

皆さんが普段何気なくやっている記録を残すという作業は、
勤務している病院と患者様にしっかり業務をやっているということを示すだけではなく、
いざという時に自分を守ることにもつながります。

お忙しいとは思いますが、
記録は重要な点だけでもできる限り小まめに残すように、心がけて下さい。

引用ここまで。

引用元では記録をこまめに残すことを勧めていますが、
記録を書いている際に思い出したり、
内容を訂正したくなったりとするものです。

事故が起きた際に書く資料に関しては、
逐一記録を残すことが大事ですが、
この事例に限らず事故が落ち着いてから記録を書くものですから、
あとでまとめて書くのは仕方ない部分はあります。

そんな中、
訂正印や二重線があるようなら全部書き直すといった書き方をしておかないと、
いざというときせっかく書いた記録が無効と見做されてしまうという良い例だと思います。

手書きのものがすべて書き直しとなるのは非常に大変ですが、
裁判になった際に証拠として採用されるか否かに関わるため、
しっかりと記録を残すこと、
書き直しなどが発生したらしっかりと一から紙を用意して書き直しを行うことを把握しておきましょう。

いかがだったでしょうか。

皆さんも改めて事故が起きた時にどう対応するかを頭の中で思い返すことで、
いざというとき迅速に行動できるかと思います。

頑張りましょう(^^♪