拒否されてからの入浴介助の声かけ方法

介護は、排泄、食事、入浴、着脱、レクリエーションなどの仕事がありますが、
中でも入浴介助が一番利用者さんと過ごす時間が長くて、
短くても30分、長い方だと1時間以上介助の時間がかかったりします。
それだけ利用者さんと接するため、
入浴介助で利用者さんから信頼されるようになることがスキルアップの一つの目安だと言われます。

自分で入浴出来ない方であれば職員がお手伝いするわけですが、
「昨日入ったわ」
「自分でできるわ」
と軽やかに拒まれてしまうことも少なくありません。

「お風呂」と言っただけで、
自分のやりたくないことをこれからされるのだというイメージが浮かぶのでしょう。

途端に顔が険しくなって
「入らない」
と言われてしまう方もいらっしゃいます。

しかし入浴は、身体を清潔に保って夜の睡眠効果も促し、
血液の循環や代謝機能を高めて床ずれの予防にもつながる大切な行為です。

どうすれば入っていただけるでしょうか?

利用者さんがお風呂についてどう思っているのか、
なぜ拒否されるのか理由を挙げてみます。

1.お風呂を拒まれる理由

①「入浴」といわれてもなんのことかわからない
②お風呂の入り方が思い出せず行動できない
③裸になることに抵抗がある
④今はお風呂に入るタイミングではない
⑤記憶違いをしている
⑥強制されることが不快と感じている
⑦もともとお風呂が嫌い

2.お風呂にお誘いする声掛け方法

①声かけの際、本人が興味を引きそうな言葉を付け加える
②「お風呂」という言葉の意味が理解できていない場合
③入浴の手順がわからない場合
④本人が納得するキーワードをつかう

3.それでも拒まれてしまう方への声かけ方法

①お風呂という言葉を使わないで対応する
②なぜお風呂が嫌なのかをお伺いして、それはしないからと言って体を洗わせてほしいと交渉する
③それでも駄目なら清拭をさせてほしいと交渉する
④別の話をして、気分を乗せる
⑤着替えだけでもさせてくださいと交渉する

4.最後に

1.お風呂を拒まれる理由

①「入浴」といわれてもなんのことかわからない

「お風呂」や「入浴」という言葉の意味が理解できていないという状態です。

意味が分からないから職員の声かけに対して
「行きましょう」
とはならず、
ぼおっとした表情を返すか、
「え?」
というまったく理解できない反応を返す場合です。

②お風呂の入り方が思い出せず行動できない

「お風呂」の意味はわかっていても、
どうやって入るかなどの手順がわからなくなっていて、
動けないのです。

この場合はお風呂に対して抵抗感はないはずなので、
職員としては
「手伝いますからお風呂入りませんか?
温かくて気持ちいいですよ~」
などと明るく声掛けすればうまく行くのではないでしょうか?

③裸になることに抵抗がある

体を見られるのが恥ずかしい、
本能的に無防備になることに恐怖心がある、
寒いので嫌、
などの理由です。

この場合はなぜお風呂が嫌なのかを本人が口にしてくれれば、
職員が環境を整備することで問題が解決するかもしれません。

「寒いから嫌」であれば、
浴室をシャワーで温めておいて利用者さんが寒い思いをしないようにしますよとお声がけするとか、
浴室にエアコンなどを使って温めることができるなら、
利用者さんが寒い思いをしないようにできます。

異性に見られるのが恥ずかしい方に対しては同性介助で対応すればいいし、
同性でも恥ずかしいと言われるのでしたら、
「ご自分でできるところはできるだけやっていただきますので、
ここだけ手伝わせてください」とか、
「ここだけ見守りさせてください」といった交渉をすることで、
利用者さんの羞恥心や自尊心に配慮しつつ、
利用者さんが納得して入浴していただけるかもしれません。

④今はお風呂に入るタイミングではない

見たいテレビ番組がある、
寝ていたい、
疲れているので動きたくないなど、
他のことに興味が向いている状態です。

一番ありがちなのがこのパターンです。

本当に見たいテレビがあるのであれば、
時間をずらすことで入浴していただけるかもしれませんが、
だいたいは断る理由にテレビを使っているだけで、
よくよく話を聞いてみると、
「面倒だから」
というのが理由に上がってきます。

⑤記憶違いをしている

お風呂に入っていないのに入ったと思い込んでいる場合があります。

入ったと思いこんでいる利用者さんに対して、
入っていない証拠を突き付けたり、
否定することで頑なになってしまうことも容易に想像できますから、
利用者さんの認識を肯定しつつ、
入浴のメリットを提案できるといいですね。

⑥強制されることが不快と感じている

介護者が無理強いをしていることだけが感情に残ってしまって反抗します。

職員の対応が悪かったことが記憶に残っていて、
職員から○○しましょうと言われること自体が嫌という場合もあるでしょうが、
プライドが高くて
「自分で何でもできるのになんで職員からそこまで言われなくてはいけないのか」
と拒否されてしまう方が以前いました。

実際は毎日どころか一週間以上入っていませんし、
自分でお湯を張ることもできたことはない方でした。

その方には職員が事前に浴槽にお湯を張っておいて、
「せっかくお湯が温まっているから今入っちゃいましょう!」
と声掛けして成功したこともあったり、
まず居室の浴室まで来ていただけないので、
浴室前に体重計を置いて、
「申し訳ないですけど体重を計りたいのでこちらまで来ていただけますか?」
と言って来ていただいた上で、
「今お風呂入れますから入りましょう?」
と声掛けして成功した事例があったりしましたが、
毎回成功するわけでもなく、
最終的には手の打ちようがなく誰も入浴出来ないまま、
尿失禁をしたまま食堂に来られるようになったり、
食堂のソファで熟睡されたまま尿失禁され、
拒否されるので誰も下着を交換できなかったりと、
困難な状態になり、
そして一年もしないで逝去されました。

とてもプライドの高い方でしたから、
何でも自分でできると言われて、
職員の介助がほとんどできない方でした。

その利用者さんに対して、
ある女性職員が、
「匂うからお風呂入ってください」
と声掛けしたことで入っていただけたこともありましたが、
声掛けは言い方とか誰が言うかで利用者さんが怒ってしまうかもしれないので、
気を付けてください。

信頼関係がありコミュニケーションも十分に取れている職員であれば、
そういった声掛けもありなのでしょう。

⑦もともとお風呂が嫌い

この場合は入っていただくのは非常に難しいですね。

お風呂のどの部分が嫌いなのかをお伺いして、
その要望に応えながら体を洗わせていただくことができればいいですが、
それも無理なら清拭をするとか、
お部屋でシャンプーを使うとかしかないのかもしれません。

どこまで交渉できるかで変わってきますが、
月に二回とかは清拭ではなくてシャワー浴をさせていただくといった、
約束が出来るといいですね。

2.お風呂にお誘いする声掛け方法

お声がけの際に、単に
「お風呂がありますから入りましょう?」
といって納得される方ならいいですが、
そうでない方もいらっしゃいます。

ここではどのように声掛けするかを書きました。

自分がそこまで意識して声掛けしているか、
確認してください。

①声かけの際、本人が興味を引きそうな言葉を付け加える

「○○さん、この近くで温泉に入れますから、
温泉に入りましょう? 
今なら一番風呂だから気持ちいいですよ!」
などと、
その利用者さんの好奇心を刺激する声掛けがいいかもしれません。

「しょうぶ湯だからいい香りがしますよ」
とか、
「大浴場のお湯の素が入ってますから、
痛みに聞くかもしれませんよ」
と利用者さんが
(それなら入ろうかしら)
と思っていただける声掛けが出来たら最高ですね。

②「お風呂」という言葉の意味が理解できていない場合

お風呂という言葉自体に反応がないのであれば、
利用者さんにお風呂場の写真を見せたり、
タオルやせっけん、入浴セットを持っていただくことで、
思い出すこともあります。

それでも思い出していただけないのであればお風呂場までお連れして、
湯気の立つ湯舟を見ていただいたり、
お湯に手を入れてもらって、
温かさを感じてもらってお風呂への意欲を掻き立てる方法もあります。

浴室まで来ていただけているのであれば、
足浴や手浴をしながら、
お喋りしてお風呂が温かくて気持ちいい事を理解してもらうことで、
「じゃあお風呂入りましょうか」
と持って行くこともできるでしょう。

「汗をかいていますからお湯でさっぱりしませんか?」
とか、
「シャワーで体を綺麗にしてから湯舟に入りましょう? 
温かくて気持ちいいですよ」
などと声掛けするといいでしょう。

③入浴の手順がわからない場合

入浴の方法が分からないから不安だという方には、
「職員が一緒に手伝いますから大丈夫ですよ」
「分からない所はお手伝いしますから、安心してください」
とお声がけしつつ、
介助を行いましょう。

実際に利用者さんがどこまでできないのか、
どこでつまるのかを見ながら、
部分部分介助を行うことで、
利用者さん自身も安心して入浴していただけるはずです。

④本人が納得するキーワードをつかう

その利用者さんにだけ通用するワードを見つけることが出来たら、
ここぞというところで使ってお声がけをしてください。

「明日はお出かけするから、
今日は身ぎれいにしておきましょう?」
とか
「〇〇さんからも、
お風呂にしっかり入ってほしいって言われてましたよね。
今日はお風呂に入れますから、
今のうちにはいっちゃいましょう?」
などと、
「お出かけ」するためには綺麗にしなくてはいけないという思考に乗せるとか、
「〇〇さん」という非常に身近な人の名前を出すことで、
本人の中でやろうと思える動機を作ることが大事です。

3.それでも拒まれてしまう方への声かけ方法

ここからは一般的にお風呂にお誘いする時にどのように声掛けしているか、
流れを書いてみました。

新人さんですと自分の引き出しが足りなくて、
断られたのだから仕方ないと諦めてしまう人もいるかもしれませんが、
粘り強く交渉することで出来る場合もあるので、
利用者さん毎にどのように声掛けしたら成功するのかを事前に他職員に聞いて把握した上で、
自分の動き、声掛けを調整していってください。

①お風呂という言葉を使わないで対応する

お風呂と言われただけで途端に穏やかな雰囲気から険しい表情になってしまう方に対して、
「お風呂の準備をさせてくださいね」
とか
「お湯が溜まりましたから、お風呂入りましょう」
などと言ってはいけません。

事前に先輩や同僚から、
この利用者さんをどのように入浴していただいたかリサーチしていますか?

絶対にしてはいけないことの一つとして、
お風呂というワードがありませんでしたか?

利用者さんをスムーズに入浴していただくためにも、
その方が「お風呂」という言葉に反応する方かどうかは事前に知っておく必要がありますし、
知った上でうかつにも言ってはいけません。

あくまでも利用者さんの嫌がることをしにきたのではないことを
利用者さんへの声かけの中に含ませてください。

たとえば服が失禁などで汚れている方がいたとしたら、
服が汚れていることをお伝えして、
「こちらで体を洗わせてください」
といって浴室にお連れして、
ついでに上半身も脱がさせていただいて、
身体を洗っていくというのがよくあるやり方です。

浴槽にお湯が張っていたとしても、
利用者さんがお風呂に入りたくないと言われるのでしたら、
「別に入らなくてもいいので、
身体だけ洗わせてください」
と利用者さんを納得させる言葉をかけながらお手伝いしましょう。

ある利用者さんに対しては、
「体重測定をしなくてはいけないので身体の衣類を脱いでいただけますか?」
といって、
全部脱いでいただいて体重を計った後、
お風呂場のお湯をお見せして、
「〇〇さんのためにお湯はっといたからどうぞ」
というと、
「そう?」
といって入ってくれるという方法もあります。

ベッドにいる方ですと、
「〇〇の用事があるから、一旦トイレ行っておきましょう」
といってトイレにお連れした後、
「今日はお泊りなので洋服の確認を一緒にしてもらっていいですか?」といって浴室前で衣類を脱いでいただけるケースもあります。

「頼みごとがあるからこちらに来ていただけますか?」
といって、浴室までお連れできる方。

「少し散歩をしましょう」
といってフロアを一周廻ってからお風呂場にご案内できる方もいます。

利用者さんに何といったら納得していただけるのかを試行錯誤しながら、
挑戦していきましょう。

②なぜお風呂が嫌なのかをお伺いして、それはしないからと言って体を洗わせてほしいと交渉する

お風呂が嫌いと言われる方、
お風呂には入りたくないと言われる方は何人もいらっしゃいますが、
なぜ入りたくないのかはしっかりとお聞きしましたか。

たとえばお風呂場は寒いから嫌だという方、
浴槽をまたいで入るのは怖いから嫌だという方、
面倒くさいから入りたくないという方、
だいたいがこれらに入ってくると思います。

ではそれを解決するためにはどうすればいいでしょうか。

寒いから嫌だという方には、
室内のエアコンを効かせて、
浴室から上がった後に寒い思いをしないようにするとか、
浴室から上がる前にしっかりと体を拭いて、
肌着だけでも着ていただくことで寒さを和らげる方法、
浴室内で寒い思いをしないために、
身体を洗っている最中、
適宜シャワーをかけて少しでも不満を出ないように対応するなど、
方法はいくつかあります。

浴槽をまたいで入るのは怖いから嫌だという方には、
浴室用の椅子や浴槽用の小さな椅子を使って、
座りながら移乗する方法はあります。

浴槽から上がる際にも、相当重たい方でなければ、
ご本人にある程度の脚力がある方であれば、
ご本人の力を使って立っていただいて、
そこから浴室用の椅子にお尻を乗せることで、
あとは両足を片方ずつ浴槽から上げていけます。

介護職員が非力すぎて小柄な利用者さんですら持ち上げられないというのでなければ、
大丈夫だと思います。

面倒くさいと思っている方への対応ですが、
「私が全て手伝うから、お願いだから入りましょう」
というようにしています。

利用者さんが自分で入らなくてはいけないとか、
自分で体を洗わなくてはいけないとか、
そういったしなくてはいけないことがいくつもあるのが入浴ですから
面倒というのも分かります。

だからこそ、
「職員がやりますから入りましょう」
とお願いすることで、
利用者さんをその気にさせるわけです。

身体を洗うのは面倒という方でも、
お風呂につかることを面倒と言われる方はまずいません。

何が面倒なのかをお聞きして、
それに対してどう対応しますからと交渉しましょう。

私が勤めている有料老人ホームでは利用者さんは週に2回、
入浴されていますが、
前回利用者さんの要望を聞いて入浴できなかったということは多々あります。

そんな時は、
「前回入ってないから入りましょう」
といった言い方をしたりします。

私は試したことはありませんが、
男性の利用者さんに対して、
女性職員が
「〇〇さん、匂うからお風呂入りましょう」
とストレートに言う場合もあります。

関係性が構築できていなければ怒ってしまうこともあるので、
誰にでも使える言い方ではありませんが、
利用者さんが納得して入っていただける声の掛け方であれば、
何でも構わないとは思います。

他の職員さんと情報共有しながら、
どうやったら入っていただけるのか話し合ってください。

③それでも駄目なら清拭をさせてほしいと交渉する

浴槽へつかることはもちろん、
シャワー浴も駄目となったら、
清拭だけでもいいので身体を拭かせてくださいとお願いしましょう。

おそらく大体の施設が一週間に二回しか入浴ができないでしょうから、
利用者さんのためにあけた時間を使えるのはこの時だけなのです。

その貴重な時間が入浴出来ないとなったら、
「お風呂は諦めましたから、身体だけでも拭かせてください」
と交渉しましょう。

こちらが譲歩していること、
相手の意思を尊重していることをしっかりとアピールしつつ、
身体を拭くことが大事なことであることを説明して、
お願いしますと交渉しましょう。

それでも嫌だといわれる方もいらっしゃいます。

その場合でも、
「少なくとも陰部だけでも綺麗にさせてください」
と交渉しましょう。

「一分で終わりますから」
といって、
どれだけ時間がかかるかをお伝えすることで、
了承していただけるかもしれません。

④別の話をして、気分を乗せる

ここまで来た時点で職員も相当精神的に疲れてきていると思いますので、
一旦別の話をして利用者さんとの時間を共有しましょう。

入浴は大事なことだと思っていても、
利用者さんにお伝えしても、
伝わらない時は伝わりません。

利用者さんが昔どんなことをされてきたか、
どんな思い出があるのかをお聞きしながら、
笑顔が見られるまでお話ししてみてください。

すっかりと打ち解けたら、
「じゃあ、ちょっとこちらに行きましょうか」
といってお風呂場まで普通にお連れできてしまうかもしれないのです。

一旦、
こちらのやらなくてはいけないという呪縛から脳内タスクを開放させましょう。

職員の対応が軟化したからこそ、
利用者さんの反応も良くなる場合があります。

⑤着替えだけでもさせてくださいと交渉する

ここで時間を置くというのもあります。

他の利用者さんの入浴などを優先させて、
一時間ほど時間をおいてから再度、
訪室して交渉するのも十分効果がありますが、
記憶力に問題のない方だったりすると時間を置こうがまったく変化はないので、
そうなると最後のカードを引くしかありません。

「着替えだけでもさせてください」

そうお伝えして、
下着もろとも着替えていただきましょう。

入浴介助時に利用者さんの体の痣や外傷を見るというのが一つの大きな仕事なのですが、
着替えをしている利用者さんの体を見せていただくことで、
痣や外傷に気づくかもしれません。

あるいは、
「身体の痣とかがないか見てもいいですか? 
ついでに着替えてください」
といって、
着替えをお願いするのもいいでしょう。

4.最後に

入浴中、
「助けてー」
と何も知らない方が聞いたら絶対に虐待に聞こえる声を出される方もいますが、
浴槽に入られると落ち着かれてゆったりとお湯につかられたりするなど、
入浴介助は一筋縄ではいかないどころか、
今まで培った交渉術の全てを使っていかないと成功しない場合もあり、
また痣、褥瘡の発見もできることから、
とても大切な仕事と言えます。

皆さん、頑張っていきましょう!(^^)!