利用者による暴言への対応方法【給料が高ければ暴言を受けても構わない?】

以前働いていた有料老人ホームで看護師さんから聞いた話ですが、
入居金が何千万円となる高級な有料老人ホームの利用者さんは、
大きく二つに分かれるといいます。

よくできた人格者で他人に優しい人と、
高慢で職員をいびる人とにです。

あなたは今まで他人に人格を否定されたことがあるでしょうか?

他人に馬鹿にされ、
「こんな仕事しかできないようなお前にお金を払ってやっている俺には感謝をしろよ」
と言われたことはありますか?

「働け! 愚図が!」
と言われながら働くことができるでしょうか?

ここでは利用者さんによる暴言をパターンに分けて、
対策を講じます。

①利用者→利用者への暴言
②利用者→職員への暴言
③暴言の理由
④暴言が起きたときの対応法
⑤暴言の予防と改善策

①利用者→利用者への暴言

利用者さんによる暴言は2つのタイプに分かれます。

それは発言内容が事実に即している場合と、
状況を適切に捉えていない上での暴言です。

利用者さんは年齢を重ねるにつれて、
行動範囲が狭まるだけではなく認識能力も低下します。

視野、聴覚、認識能力、記憶力が低下すれば、
おのずと判断が的確にできなくなります。

他の利用者さんの発言一つに、
大声で怒りをあらわにする人もいます。

利用者さん同士で口論になることもあるし、
一方的に他利用者さんを批判することもあります。

利用者さん同士で問題が解決するならばいいですが、
大抵は職員が介入した方がいいでしょう。

相手が何を意図してそのような発言をしたのか、
お互いに分かっていないこともあるため、
職員が間に入って話をまとめましょう。

私の現場でも歩行器を使って歩き回り、
他の利用者さんの居室に入ってしまうAさんには、
利用者さんも職員も手を焼いています。

しかし、
「おい! そこは他の人の部屋だから入るな!! 
入るなって言ってんだろうが!!」
と大声で怒鳴るBさんの発言を容認するわけにはいきません。

いかないのですが、
職員はAさんが他の部屋に入るのを、
まずは食い止めるしかないので、
Aさんの所に職員は向かいます。

他の部屋からAさんをラウンジに誘導していると、
「まったくしょうがねえ人だなこの人は……」
と言って職員に対してにやりと笑うBさんに、
表立ってたしなめることはできずにいます。

このBさんに何といえば分かってもらえるのか、
他の職員とも話し合えていないのが原因かもしれません。

Aさんの行為をまず止めなくてはいけないにしても、
Bさんの高圧的な発言は何とかならないのでしょうか?

もう一例、話をしましょう。

たとえ状況が適切であっても、
批判を繰り返す人は前の施設でも存在しました。

「あの人はいつもティッシュを使いすぎるのよね」
「ほら、あの人」
「あの人はティッシュを使いすぎるから」
「〇〇さん、今日は来ているかしら」
「あの人はティッシュを使いすぎるから」

食堂に歩行器で来る利用者さんはいつも、
自分の隣に座る利用者さんの悪口を普通に言う人でした。

私はこの利用者さんが苦手でした。

いつも他人の文句、他人の悪い点を言い続けるため、
フォローすることすら嫌になり、
「そういうことは言わないでもらえませんか」
と言っても、その利用者さんの悪口は止まらないのです。

大声を上げなければ、
口調が厳しくなければ、
本人に聞こえなければ、
あるいは本人に聞こえても本人の気分を害さなければ、
(悪口を言われる側の利用者さんは理解力が低下していて、
他人の発言に無頓着になっていて、
こういった悪口に気分を害したことはありませんでした)
暴言にあたらないのでしょうか?

②利用者→職員への暴言

・制度上認められていないサービスを強要された
・人格を否定する言葉を言われた
・顔に唾を吐かれた
・土下座を強要されて、それが嫌なら辞めろと言われた
・到底受け入れられない要求をされた上に、
「介護職を選んだのはお前だろ? 自己責任だろうが」と言われた。

心無い暴言を言われた介護職員が一定数いることを施設全体の問題として捉えて、
職員を全力で守る体制を整えない限り、
介護職員は心が折れて離職してしまいます。

③暴言の理由

認知に問題のないクリアな方からの暴言はともかく、
認知症の方による暴言は防げるかもしれません。

それは認知症状により暴言に至ったのであれば、
様々な原因を推測し、
原因をうまく解消できたなら暴言が生じにくくなるためです。

理由1:混乱している

認知症の利用者さんは、
記憶力が十分にないことが多いです。

直近の出来事をほとんど覚えられないため、
職員から説明を受けたとしてもそれを理解できない、
理解できても覚えられないことが多いです。

さらに今の状況を的確に把握することも難しいことが多いです。

今自分はどこにいるのか? 
なぜ自分がここにいるのか? 
なぜ自分のことが分からなくなってしまったのか? 
なぜ家族が一人もいないのか?

施設に入居した際、
ご家族さんや管理者より説明がされているはずですが、
それを覚えられる利用者さんならば混乱は比較的少ないでしょう。

理解できないから、
そして覚えられないから混乱します。

認知症の利用者さんは、
論理的な記憶より感情的な記憶は残りやすいため、
「職員の〇〇に××された」と明確には言えなくても、
男性職員の〇〇さんに会うと、
嫌な事をされた感情がよみがえるということはあります。

なので拒絶されたり暴言を吐かれたりということが起こりえます。

理由2:感情のコントロールができない

認知症の利用者さんは感情のコントロールが難しい人がいます。

大脳の前頭葉は、
感情を抑制して冷静に思考したり行動を行う機能がありますが、
そこが委縮していた場合、
利用者さんは恐怖や怒りで興奮してしまいます。

興奮した利用者さんに職員も大きな声で
「〇〇さん! もうすこし静かな声で!」
と言ってしまうと、
利用者さんは何を言われたのか分からなくても、
大声で注意されたことは分かるため、
さらに不穏になって暴言をしてしまいます。

理由3:周囲の感情に影響される

認知症の利用者さんは言葉を聞いて理解するのは難しくても、
周囲にいるご家族さんや職員などの感情を読み取ることは得意です。

その場で起きていることを、
信頼のおける人の表情や態度から理解します。

前に働いていた有料老人ホームの話ですが、
利用者さんがどれだけ娘さんの事を信頼しているかは、
毎日のように
「〇〇ちゃんは来ないの?」
と聞いてくることからも察することができました。

娘さんが大学まで行った事や、
自分が英語が得意だったことが自慢で、
毎日のように他の利用者さんにそのことを言っていましたから、
プライドが人一倍高い様子がうかがえました。

そんな自慢の娘さんが来た日でも、
娘さんと利用者さんがいつのまにか口論になって、
娘さんが大声をあげてしまっている時がありました。

私がとっさに入ってとりなしたのですが、
その時利用者さんも、
娘さんの表情、感情につられて感情的になっていました。

認知症の利用者さんでなくても、
相手が怒っているとこちらも影響を受けてしまいます。

利用者さんが、
大切な方の表情や態度に影響されてしまうのは当然でしょう。

理由4:自尊心が傷つけられている

認知症の利用者さんは、
普段から自分のできることがどんどん減っていっているのを自覚していますから、
他人から試されるような言動やのけもの扱いされ自尊心が傷つけられると、
過敏に反応してしまいます。

先日、夜勤さんに報告をしなくてはいけない中、
一人の利用者さんから
「君が夜勤なのか?」
と再三質問されたことがありました。

「違いますよ」
と答えた後で夜勤さんが到着したので、
さっそく状況を報告しようとした所、
その利用者さんが会話に割って入ってきて
「誰が夜勤ですか?」
と聞いて来たので、
「ちょっと仕事の話をしているので後にしてもらえませんか?」
と言ったところ、
「俺だって仕事の話をしてるんだ!!」
と語気を荒げて怒らせてしまいました。

「こちらの方が夜勤ですよ」
と夜勤さんを紹介することで、
ようやく納得してくれました。

理由5:体調が悪い

健常者であれば自分の体調が悪くなったら、
職場や学校に連絡したうえで病院に行くなど、
対策をすぐに講じることができます。

ですが認知症状のある利用者さんですと、
「なぜ自分のお腹が痛いのか」が分からないうえに、
どうすれば痛みを解消できるのか分からないため、
そんな状況の中、
職員が行う声かけや介助が火に油を注ぐことにもなりかねません。

良かれと思ってした声かけや介助が利用者さんに理解されなければ、
それは利用者さんをより追い詰めることにもなりえます。

「こんなにお腹が痛いのにお前は殺す気か!」
と大声で叫び続ける利用者さんを、
本当に助けなくていいのかは管理者や主治医の判断が必要でしょうが、
大声を出したり暴言を言える元気さがあるなら一旦引いて、
利用者さんが落ち着くのを待つのも選択肢としてはありでしょう。

その他、
脳血管性認知症では感情のコントロールがきかないため、
感情失禁が見られるといいますし、
レビー小体型認知症の利用者さんは幻視とって、
我々には見ることのできないものが実際に見えるといいます。

我々とは認識が変わりますから、
それを恐れて暴言が出るかもしれません。

前頭側頭型認知症では人格の変化が目立つため、
反社会的な衝動的行動、言動が現れます。

④暴言が起きたときの対応法

暴言のある利用者さんに対して、
高圧的な態度は厳禁です。

叱りつけたりすることで利用者さんがより意固地になってしまい、
事態がややこしくなるためです。

対処1:物理的に離れる

自分の許容量を超えた暴言を受けてしまったら、
一旦可能な限り離れて距離を取ってください。

利用者さんがあなたを傷つけようと意図して言葉を選んだ場合はもちろん、
そうでなかったとしても、
あなたが感情的に反応して事態を悪化させるよりは、
離れた方が賢明です。

対処2:感情を整える

物理的に離れられたら、
利用者さんとのやり取りを思い返してみましょう。

もし心がざわついたのであれば、
無理に考える必要はありません。

やりとりを冷静に思い返すことができたら、
文章にしてみるとか、
喋ってみたりすることで気持ちの整理をつけられます。

現場に介護日誌など、
利用者さんの状況を記録するものがあればそれに記載しましょう。

対処3:誰かに相談する

他人に話せると思えるのなら、
同僚や先輩、上司に報告したり相談してみましょう。

もしかしたら相手も、
過去にそのようなことを経験しているかもしれません。

相手と経験を共有することで、
あなた自身の心の傷をいやすことができるでしょう。

そもそも利用者さんの暴言は、
職場全体で対応方法を検討しなくてはいけませんから、
報告は早めにしたほうがいいですが、
あなたがすぐに報告できないのであれば、
その気持ちも含めて同僚か、先輩か、
上司か、会社の通報部署などに、
いつになったら報告するのか、
どこまで事態が悪化したら報告するのか、
ラインを決めておくといいでしょう。

暴言が2回続いたら報告するとか、
暴言の内容がここまで言われたら報告するとか決めることで、
迅速に行動できるようになるでしょう。

⑤暴言の予防と改善策

利用者さんがどのような状況で暴言をしてしまったのかを振り返って、
原因をつきつめることで対策を考えられるかもしれません。

一人よりも施設全体で考えた方が様々な発想を得られるでしょうから、
出来る限り細かい状況報告を行い、
話し合っていきましょう。

予防策1:利用者さんが不安にならないように対応しましょう

暴言をしたその時、
利用者さんが不安に苛まれていなかったか? 

最近はコロナ騒ぎで外出できなくなったり、
ご家族の訪問が制限されて、
自分の事を深く知っている人との会話に欠乏していますから、
利用者さんはより不安に襲われているでしょう。

そうでなくとも、
利用者さんがどんな状況なのかを踏まえた上で、
これからどうしていくか、
どうすればいいかを日ごろから丁寧に利用者さんにお伝えしていきましょう。

利用者さんは忘れてしまうかもしれませんが、
何度もお伝えすることで状況は忘れても、
あなたと接する事に安心感を得られるようになるかもしれません。

メモを書いて渡したり、
居室に大きな紙を貼って、
利用者さんがすぐに読めるものを用意するのもいいでしょう。

予防策2:利用者さんを否定したり自尊心を傷つけないようにしましょう

利用者さんの発言を否定するのは簡単ですが、
利用者さんが職員の発言を素直に受け入れてくれるとは限りません。

他の利用者さんの尊厳を傷つけたりしない範囲であれば、
利用者さんの発言を否定しないで同調することで、
利用者さんはあなたが
「分かってくれた」
と思うかもしれません。

傾聴する努力を今までしてこなかったから、
利用者さんに余裕がなくなって、
暴言に繋がったかもしれません。

いつならば傾聴できるか考えるだけでも、
普段からの対応が変わってくるでしょう。

利用者さんの心の機微を推し量ることができるようになれば、
利用者さんを否定するような言動や、
利用者さんを試したりはしなくなるでしょう。

予防策3:自分の感情を受け入れましょう

利用者さんとのやり取りで自分が傷ついたことや、
内心苛立ったり怒ってしまった事もあるでしょう。
それを否定するとそのツケは後で支払うことになりますから、
自分の感情を否定してはいけません。

なぜ傷ついたのか、
なぜ怒ったのか、
なぜ苛立ったのかを思い返して、
次からどうしていこうか考えることが大切です。

思い返しても自分が怒るのは仕方ないとすれば、
原因は自分以外にあるからじゃあどうしようかと、
考えを一歩前に進めることができますから、
自分の感情を受け入れましょう。

いかがだったでしょうか。

これら対策や予防策は暴言だけでなく、
暴力への対応にも通じるものです。
利用者さんの状況を振り返りつつ、
自分ひとりで抱えるのではなく、
チームで対応するよう心がけましょう。

頑張ってください(^^)/