なぜ利用者の不信感を解消できないのか?【不信感が暴言・暴力を起こす】

カイゴトークにて以下の相談が寄せられました。

老健にて、認知症はない男性利用者Aさんが、
以前は笑顔を見せる優しい方だったのが、
あるきっかけで毎日のように急に怒るようになりました。

そのきっかけとは、
膝折れした際に痛めた膝の医療行為が遅れた事でした。

対応が遅れた事に関してはすぐに謝罪していますが、
その日を境に、

「ここの職員は信用できるか!」
「そんなことは自分でする!」
「〇〇を持ってこい!」

など、
言葉がきつくなったり枕を投げたり、
「別になにもない」など嫌がらせのようなコールが増えたり、
女性職員にだけ態度を変えたりしています。

このような男性利用者さんに、
どのように対応すればいいのでしょうか。

この相談を読んで、私は最初、
認知症が進行したのではないかと思いました。

きっかけとなった出来事については介護側に不備があって、
きちんと謝罪もしたとのことですので、
利用者さんに対して失礼の対応は取っていないとは思われます。

ただしその出来事をきっかけとして、
利用者さん自身の不安感などが増幅して、
ご自身の感情を制御できない状況にあるか、
あるいは認知症状が進行して何かを思い込んだのでなければ、
そこまで介護職員に対して高圧的なというか、
不信感をあらわにした発言、行為に及ばないのではないかと思ったのです。

投稿者さんからは認知症ではない方という説明がありましたが、
ここでは認知症がなかった場合はどうするかと、
認知症が見られた場合はどうするかの2パターンを想定しつつ、
対策を検討しています。

①認知症でない場合
②認知症傾向が見られる場合
③不信感を解消できないまま介助をするのはやめよう
④信頼関係ができている職員はいるか?
⑤ご家族への状況説明は十分にしているか?
⑥転居も視野に入れましょう
⑦最後に

①認知症でない場合

認知症が進行していない場合、
利用者さんへの説明や謝罪を管理者はしたとしても、
利用者さんが職員に対して暴言を吐いている時点で、
職員と利用者さんの間に信頼関係がなくなってしまったのは明白です。

その原因が膝折れへの説明不足であれ、
違うにせよ、
ご本人との関係を円滑にするためにはいったん管理者を通して、
利用者さんが何を考えているのか、
どう思っているのかを伺わなくては何も解決しないでしょう。

利用者さんがどう思っているのか。

日々の生活の中での困りごとは何か?

職員への不満があるとしたら、
一番何を直してほしいかなど、
利用者さんの考えをしっかりと把握したうえで対応しないことには、
適切な介助ができなくなるでしょう。

利用者さんの思いをしっかりと把握した上で、
約束できることをお約束して、
職員間での連携を図っていく。

この流れを作ることで、
利用者さんの納得を得られるのではないでしょうか。

②認知症傾向が見られる場合

不安を感じて混乱しているかもしれない
認知症の方ですと、
職員から説明を受けても忘れてしまって、
現状がどうなっているのか、
これから何があるのかを分からないから不安になってしまっている可能性があります。

その上で職員が「むりやり」利用者さんに何かをしようとしているから、
拒絶したり抵抗したり、
暴言をはいたり暴力を振るったりという行動に出るのかもしれません。

感情がコントロールできない
高齢者は感情の振れ幅が大きい方がたまにいらっしゃいます。

普段は穏やかでも何かのきっかけで怒りのスイッチが入ってしまう方はいます。

この方はそういう方なのだと理解すると、
特にその方への対応は注意を払って行います。

認知症の方ですと、
感情を抑制し冷静な思考を行う大脳の前頭葉が委縮していることが多いため、
利用者さんご本人の性格に関係なく、
自分の想定できない場面や期待していた状況から外れると恐怖や不安で興奮してしまい、
その興奮を周囲に発揮してしまうことがありえます。

周囲の感情に巻き込まれる
認知症の方は言葉での理解は難しくなってきますが、
反対に職員の表情から感情を読み取ることは得意になります。

その場で起こっていることを近くにいて自分が信頼する人の表情や態度から、
いまどのような状況なのかを感じ取ろうとします。

楽しいことが起こりそう、
何かをやらされそう、
怒られるのでは、
良くないことが起こっている、
などと表情から読み取れることには限度があるので、
そこから状況を察するのではなく、
自分の感情がそれに影響されると言った方が正解でしょう。

自尊心が傷つけられている

認知症の方であっても、そうでなくても、
人は誰でも自尊心が傷つけられれば悲しんだり怒りを覚えます。

認知症の方は、
自分が認知症だという理解がなかったとしても、
自分がどこかおかしいということには気づいていますから、
職員から無視されたり邪魔者扱いされたり、
試すような行為をされた場合に敏感に反応します。

職員は限られた時間で仕事をしているため、
常に利用者さんの対応をできるわけではないですし、
利用者さんが目の前にいたとしても、
色々な事を考えていて利用者さんの発言を流してしまう事もあるかと思いますが、
何度も無視されたりすれば利用者さんも不満を爆発させて怒ってしまうのも当然です。

体調不良である
認知症の方は自分の痛みや体調不良を的確に周囲に伝えることが非常に難しいです。

記憶能力が十分にある人であれば、
自分が何時間か前に食べたものがあたったのかもしれないとか、
昨日の夜から頭が何故かガンガン痛くなってしまってどうしようもないのだとか、
自分の状況を正確に伝えられるでしょうが、
認知症の方の場合、
自分がどこが痛いのかも伝えられない場合もあります。

職員は、
利用者さんがいつもと表情が違うなとか、
体勢がいつもと違って俯き加減だなとか、
返答が辛そうだなとか、
そういったところから利用者さんの異常を見つけます。

認知症特有のもの
 その他、脳血管性認知症の方は感情のコントロールが出来ず、
感情失禁が現れますし、
レビー小体型認知症の方は幻視を見て、
それに対処するために暴言や暴力をしているのかもしれません。

前頭側頭型認知症で、
特に側頭葉の委縮が見られる場合には、
人格の変化が起こって反社会的な衝動的な行動、暴言、暴力が見られます。

③不信感を解消できないまま介助をするのはやめよう

職員は介助をするのが仕事だから利用者さんに接しようとするわけですが、
利用者さん自身にわだかまりがあり、
職員の介入を嫌っているのであれば、
まずはコミュニケーションを行って、
これからすることが利用者さんにとって必要な事であり、
大切な事だから、
させていただけませんかと同意を得ることが大事です。

それをしないまま雰囲気でできる人ならばここまで問題がこじれていないわけで、
利用者さんに暴言や暴力行為も見られなかったでしょうから。

利用者さんが明らかに怒っていたり、
不穏だったりするのに強気な態度で介助に入ろうものなら、
利用者さんの暴言や暴行という形で、
お互いが不幸になるのは目に見えています。

それを察することがない職員というのも新人ではたまにいたりしますが、
チームプレイでそこはフォローするとして、
困難事例であることが分かっている利用者さんに対して、
時間をかけて取り組まなくては解決しないのだという腹積もりもなく、
普段通りに介助を行おうとしてもうまく行くはずがありません。

突然利用者さんが暴力行為に出たとして、
利用者さんに対して
「それはやめてください!」
と強気に出る職員もいますが、
その態度が利用者さんをさらに興奮させてしまうことから、
できることを十分にしないで安易に介助を始めてしまうことのないようにしてください。

④信頼関係ができている職員はいるか?

ご自身でできないから援助が入っているわけですが、
「自分でできる!」と断られてしまう利用者さんに対して、
何と声かけをすればうまくいくのか。

援助の時以外、穏やかにされている時はあるのか。

コミュニケーションはどの職員もうまくいっていないのか?

一番信頼関係ができている職員や管理者からのお願い事や交渉で、
ご本人が意識を変えてくれるのか、
考えるべきことは色々とありますが、
ご本人にとって一番いいのは何か、
それを達成させるためにはこの援助がどうしても必要なのですが、
手伝わせていただけませんかとお願いすることで、
徐々に利用者さんの意識や態度が軟化していくのでは、
そう思います。

仮に援助ができなかったとしても、
利用者さんのために割り当てられた時間は、
その利用者さんのために使えと、
今私が働いているケアマネージャーがよく言います。

援助拒否になったとしても、
その空いてしまった時間を使って利用者さんとのコミュニケーションを取ることで、
それ以降の援助が変わってくるはずです。

できることはまだまだあるはずですので、
様々な職員間の連携を密にしてアイデアを出し合っていきましょう。

⑤ご家族への状況説明は十分にしているか?

以前穏やかで優しかった利用者さんが、
小さなことで怒りっぽくなり、
暴言や暴力が見られるようになったことを、
管理者やケアマネからご家族さんに話はもちろん伝えているとは思います。

その上で今後援助がうまくできなくなるかもしれません。

できるようには努力いたしますが、
本人の意思に反した形で援助をすることはできないため、
強い拒否が続いた場合は援助できないこともありますが、
ご了解いただけますか? 
といった、
ご家族さんへの了解を取った上で、
介護職としてどこまで関わっていくのかを検討していくことが大切です。

また、
利用者さんの言動を日々、
細かく記録に残しておくことで、
いざという時に証拠として利用できますので、
職員一丸となって期限を1週間~2週間と区切った上で、
どういったことが起こったかなど記録していけばいいかと思います。

職員の負担をあまりかけないように配慮しつつ、
利用者さんへの問題解決に向けて情報をまとめることが大切です。

施設は共同生活の側面があります。

利用者と介護職という立場の違いはあっても、
人間関係としては一般的な常識の範囲での関わりであって、
立場の上下はないと思います。

利用者さんが不満に思っていることを解決することは大切ですが、
だからといって暴言や暴力を容認するかは別の話です。

利用者さんの嫌がらせのコールや枕を投げたりといった行為に対しては、
毅然とした対応が必要かと思います。

⑥転居も視野に入れましょう

利用者さんに対して、
「そこまで合わないのであれば別の所に転居されますか」
とご提案するのもいいのかもしれません。

精一杯職員が誠意を示したとしても、
利用者さんが受け入れられないのであれば、
転居したほうが利用者さんにとっても住みやすい生活を得られることに繋がるでしょうから。

施設としては納得のいく形に持っていきたいとは思いますが、
利用者さんがもしどうしても納得できないというのであれば、
転居されるしかないのかもしれません。

⑦最後に
援助困難な利用者さんは、
私が働いていた有料老人ホームにもいらっしゃいました。

入浴拒否がとても多くて夏場は特に匂いがきつくなり、
ご家族さんによる声かけにも次第に成功しなくなり、
最後は失禁が続き、
それでも下着の交換などさせていただけなくて、
最後の最後まで援助はほとんど入れずに逝去されてしまいました。

「自分はできるんだからそんなことは放っておいてくれ」

入浴介助であれ、排泄介助であれ、
介助ができないと他の方への影響ももちろんありますし、
ご本人の衛生上の問題もあって、
いかに声かけするかは職員皆で話し合ってきましたが、
良い解決方法かと思っても、
必ずしも成功するとは限らなくてという状況がずっと続いていました。

ご本人の意思をどこまで尊重するのかはケースバイケースだったり、
ご家族さんの意向もあるので一概にこうあるべきと括ってしまうわけにはいきません。

その時その時で状況が変わっていくため今何が必要なのか、
何に職員が困っているのか、
何に利用者さんが困っているのか、
考えれば考えた分だけ観察力が上がっていくはずです。

頑張っていきましょう(^O^)/