依存心が高く、要求の多い利用者さんへの対応方法【自立支援の難しさ】

1.介護職として大変な事
2.要望にはできるだけ応えるべきか 事例その1
3.要望にはできるだけ応えるべきか 事例その2
4.いつでも出来るとは限らない
5.終わりに

1.介護職として大変な事

介護職として働いていて、一番難しいのは認知症への対応方法だと思っています。

記憶力が薄れて自分がなぜ家にいないのか分からない、
家族から見放されて一人でいるのは耐えられないことからナースコールを頻回に押して、

「どうしたらいいんですか?」

「馬鹿になっちゃった」

そういって職員がナースコールの対応を3分したとしても、
切ってから何分も経たずにまたコール。

これが何十回も続いてしまうことも。

そうなってくると職員は通常業務ができなくなり、
その方への対応を優先するか、それ以外を優先するかの選択を迫られます。

職員も人間ですから、
同じ話を何度もされると器に水がいっぱいになって溢れるように、
心と表情に余裕はなくなり態度も硬化してしまいます。

では認知症以外の方なら職員は余裕をもって接することができるかというと、
そうではない場合があります。

それは依存心が高く、要求の多い利用者さんへの対応で、
日々反省したりの連続だったりします。

昨日もその利用者さん(Nさん)とやりとりがあったので、
2つ、その話をします。

2.要望にはできるだけ応えるべきか 事例その1

食堂のお席で、その方の座られている席の斜め向かい側に車椅子の利用者さんが
座られていることが多いのですが、今回お話しする利用者さんをNさん、
車椅子の利用者さんをMさんとします。

Nさんは居室の中はともかく、
居室以外の場所で歩行器を使わずにご自分で好きなように歩かない方です。

歩くことに痛みがあると言われている通り、
起き上がり時にも痛いと言われますし、
以前は朝は痛みがあるので居室に配膳してくださいと要望を出されていて、
かなり朝だけ居室配膳をしていました。

ある時から車椅子でもいいので来ていただきましょうという流れになり、
半年ほど前、
ようやく歩行器で三食の食事時には食堂に降りてきていただけるようになりました。

もちろん、横に職員がついての移動介助を行っています。

自分で廊下に出てこようとすることはまずなくて、
食堂でも自分で立ち上がろうとすることはありません。

Nさんはご自身で席に座るときも、立ち上がる時も、移動の際も、
居室の扉を開けるときも、トイレに行きたいと思った時も、
自分で出来ることは数多くあるはずなのに、
職員にお願いしてきます。

「お願い」と微笑して、自分はできないからやってくださいと言ってきます。

ですが本当にできないことをお願いしてくることはまずありません。

Nさんはまれに転倒されるために移動介助の援助が入っていますが、
殆どができることで自分でトイレに行くことも、ズボンを下ろして座ることも、
自分で髪を洗うこともできる人です。

ですが職員にお願いしてきます。「お願い」と微笑んで。

援助が入っているので見守りはしますが、
殆どご自身でできる方なのでこちらが一部介助しなくてはいけないことは
限りなく少ないですが、
その方があまりにも要求を何度も繰り返すことで職員が折れて、
仕方なく援助をしてしまうという例も少なくないです。

入居当初から言われていた気がしますが、
この方は他人に依存する傾向があります。

もともとメイドさんを雇っていたらしく、
日常的に他人にお願いすることで自分が望んだことがかなうと満足されるのでしょう。

私が昨日の昼食時、
車椅子のMさんを食堂席に誘導した際、
いつもNさんの斜め向かいに座っていますが、
なぜ斜め向かいではなくてはいけないのかと思いました。

Nさんは食堂全てを見渡せるような食堂席の端に座るのを好みますし、
Nさんは食堂席に座っていても、
他の利用者さんを呼んで自分ではカーディガンが着られないから手伝ってほしいと
お願いしたり、
食事の際、近くにMさんが座ると「ティッシュを使いすぎるのよね~」と
朗らかに響く声で他人の批判をしたり、
食事が終わったらすぐに職員に片づけてほしいのか、
自分の要求が通るまで何度も声を上げて職員を呼び続けます。

Nさんに対しては、
Nさんの姿が見える位置に座っている別の利用者さんからもクレームが上がっていて、
そこで斜め向かい側に座っているMさんを斜め向かいではなく、
テーブルを挟んで目の前のお席にしてはどうかと、
全体会議にて提案がされました。

その話がいつのまにか流れたのか、
最近、Mさんが向かい側に座っていることは見られなくて、
斜め向かいに座っているのを見かけます。

そこで試しで向かい側に座っていただこうと、
Mさんを対面のお席まで誘導したところ、
早速Nさんから「Mさんはいつもの席にして」と要望が出ました。

理由を尋ねると、
「だってMさんは斜めの席の方が、私が声かけしたとき食べてもらいやすいから」と
言われたのでした。

仮にそうだとしても、お試しでお席を変えさせていただきたいと言っても、
「Mさんが向かいの席だと、ティッシュを使ってしまうから困る」と言い出しました。

最近のMさんは手は上に上げられても、
ティッシュを使い続けていたかつてのような活動性はまず見られないので、
その可能性は低かったですし、
ティッシュを使われて困るならティッシュの場所を変えれば済む話です。

NさんがMさんを斜め向かいにしたい理由は、
自分が周りを見渡せなくなるから。

Mさんがいては他の利用者さんも、職員も見渡せないからやめてほしい。

そう思って要望を出したのだと思っています。

MさんがNさんの向かい側に座っていただくことで、
クレームをあげた利用者さんがNさんを見えにくくなるので、
より居心地がいい食事の時間を過ごしていただきたいという思いもあったのですが、
その後、外来の看護師さんが点滴をMさんにしたいから、
Mさんを居室に戻してほしいと急遽依頼が入りました。

Mさんは夕方から朝にかけて点滴を最近していることが増えていますが、
日中帯に点滴をすることはなくて、
申し送りでも点滴をするから食堂にお連れしないでくださいとは言われていなかったため、
Mさんを食堂にお連れしたわけですが、
外来の看護師さんの要請により、Mさんは居室に戻っていきました。

さて、ここで改めて、
Nさんの要望に応えるのが妥当なことだったのか考えてみましょう。

Nさんは自分の座っている席を気に入っていて、
周囲が遠くまで見渡せるからそこ以外の席に移るつもりはないこと。

その上で、他の利用者さんや職員に何かしら要望を出して、
親切な利用者さんがその要望に応えることでNさんは喜ぶこと。

ただしその要望の多くは自分で出来ることのため、
親切な利用者さんを小間使いに使っているように見えることから、
そういった態度は改めてほしいと常々思っていること。

またNさんは自分の食事が終わるとお盆を下げてくれるように真っ先にお願いしてくるため、
そのお願いをきくまで散発的にお願いの声は食堂中に響くこと。

Nさんは他の利用者さんへの批判を軽々しく口にすること。

それをやめてくださいと職員が言っても一向に減らないこと。

Nさんのことで他の利用者さんからもクレームが上がっており、
何らかの対策をしないことには食堂が快適な空間にはなりえないこと。

ここまで書いていて、
Nさんは本当に他の利用者さんが十分に見える位置が望ましいのか、
もう一度見直す必要があるのではないかと思いました。

というのは、Nさんは他の利用者さんと会話を楽しんでいるかというと、
その様子は見られないこと。

ということは、
Nさんが見まわしたいのは利用者さんではなくて職員ではないか。

更に言うなら、Nさんは男性職員の名前だけ確実に覚えているため、
男性職員ではないかという推測が成り立つためです。

職員の動きだけしっかりと把握したいなら、
席は厨房、カウンターの真逆である今の席ではなく、
真ん中に空いている席でもいいのではないかと思ったからです。

もしNさんが真ん中の席に移動できたなら、
クレームを入れていた利用者さんとは背中合わせになるため、
声は聞こえてしまいますが、少なくとも振り向かなければ、
その利用者さんがNさんを視界に入れることにはならない、と思ったためです。

Nさんはとても声が大きいため、
近くにいられると尚更気になってしまうのでは、
と思いもしますが、
一つ解決策が思いついたかもしれない、ということで、
他の職員に提案してみます。

Nさんは誰かと関わりたい、誰かにお願いをしてでも関わりたいと
思っているように感じます。

Nさんは誰かにお願いをすることはよく見かけますが、
誰かと他愛のない話をしていたのを見た記憶がありません。

他人の事をよく観察する方なので、
多少記憶力などに問題はあっても、
他人のことをよく気づきます。

どうすればNさんにお友達ができるようになるか、
もう少し掘り下げて考えてみたいですね。

3.要望にはできるだけ応えるべきか 事例その2

さて、もう一つのエピソードを話します。

昨日の夕食の誘導の際、
Nさんは居室に残ったミルクティーを、
捨てずに食堂まで職員が持っていってほしいとお願いしてきます。

「喉がからからになるから甘いものが飲みたい」とのこと。

この件に関しては結構前に職員間で話題になって、
歩行器で食堂まで移動するNさんの横についている職員がミルクティーの入ったコップを持っていたら、
いざNさんが転倒された時に迅速に助けられるのか、無理だろうと。

コップを落としてでもNさんを助けられるようでなくては横にいる意味がないし、
ミルクティーは破棄させていただくよう交渉する方針になりました。

自分も今までもそのように対応してきましたが、
今回も本人は「もったいないから」持っていってほしいと繰り返しました。

「それはできません。もし飲みたいなら食堂で用意するから、ここで持っていくことはできません」と、
それはできないことを説明しましたが、
何度も「持っていってください」とNさんは声が強くなり、
最終的には「もういいです。ごはん食べません」といわれました。

「ご飯は食べないんですね。分かりました」といって引き返そうとすると、
「行きます。食堂でミルクティをくださいね」と急に意見が変わりました。

今まで十回以上やりとりしてきたあの戦いは何だったのだろうと思えるほどの豹変ぶりに呆れて、
内心のいらだちを押し込めつつ、「立ってください」と声かけしたのでした。

ここまで書いてから、
「そもそも移動介助の前にミルクティーの入ったコップだけ先に食堂に持っていけば
いいのでは?」
と思い至りました。

我ながらなんでこんな簡単な方法を思いつかなかったのか疑問なので、
少し自己分析をしましょう。

まずNさんとのかかわりは極力減らしたい。

事前にコップを持っていくなどタスクを増やすような対応は頭の中に入ってない。

Nさんに関わるにしても、Nさんの要望を全て受け入れたくはない。

自分はNさんが苦手であること。

Nさんの圧の強い要望には辟易としていること。

それをはねのけることばかりに執着して、
お互いの着地点を一点しか見ていなかったこと。

こういった事が考えられます。
事前にコップを持っていくことのメリットは、
食堂でミルクティを作る手間がなくなること。

移動介助時のコップ持っていってください論争がなくなること。
メリットの方が多大ですね。気づかなかった……。

しかも誰もその対応をしていないはずなので、
しぶしぶコップを移動介助時に持っていっている方がほぼ全員だと思います。

今度、そのように提案しておきます。

4.いつでも出来るとは限らない

今働いている現場で、
依存傾向が指摘されている利用者さんがいらっしゃいます。
普段から歩き回り、
自分でトイレの中に入ってズボンを下ろして用を足せるのですが、
そこでナースコールを押してきて、

「どうしたらいい」

と言い続けたり、

「ズボンを上げられない」

と言って職員に手伝うようお願いしてくるのですが、
その方が本当にできないかというと、
時間を掛ければできます。

なので先輩職員から
「ご自分でするようお声がけをしてください」
と言われた通りにその利用者さんにお声がけをするのですが、
納得はしてくれず、
自分にはできないから職員にお願いしますと返答されます。

何回かの問答の後、
職員がその場を離れるとまたナースコールが鳴るので、
また対応するということが何回も起こります。

この方への対応はどうすればいいのでしょうか?

まずその時、
本当に利用者さんは自分でできないと思っているからナースコールで職員を呼んでいるという可能性があります。

自分にできる自信があるのに職員を呼ぶわけないですから、
心理としては当然ですね。

しかし、
動作を本当にできないかはまた別の話です。

最初の動作の流れを手伝えばできる場合があるからです。

口頭で、

「まずは〇〇をしましょう」

といって利用者さんに最初にやってもらいたいことを指示出しして、
それができたら次の動作をお伝えする。

そうして一連の行動を自分でできることを実感してもらえれば、
利用者さんご自身に何とかなるという自信が生まれる可能性があります。

手順が抜けているからできないと思っているのではないかという視点は大事だと思います。

そしてもうひとつ、
本当にできない場合があります。

これは時間帯にもよりますし、
利用者さんそれぞれにできるとき、
できないときがありうるため、

「できるときがあるんだからこの人は出来る人」

と決めつけて接すると、
利用者さんはできないため要望やナースコールが鳴りやまないということになります。

先ほど挙げた利用者さんもパーキンソン病の方なので、
時間帯によってできるとき、
出来ない時があると気づいてからは、
夜間帯は特にできないことを前提に介助するようになりました。

日中帯は薬によって行動出来ていても、
夜間帯は薬が切れていて行動できないという事があるからです。

パーキンソン病でなくても、

「あなたは出来る人だから頑張って」

と自立支援を絶対視しすぎると、
利用者さんとの信頼関係が壊れてしまい、

「できるときがあってもできるというと全部やってくださいと言われるから、
これからはできるとは言わない事にしよう」

と利用者さんの自尊心を尊重できなかったが故に、
結果的に依存傾向を高めてしまう場合があるそうです。

上で上げたNさんがそういうケースだったのかは分かりませんが、
そういう場合もあるかもしれないと頭の片隅に入れておく必要はありそうです。

何のために自立支援をするのか、
利用者さんの尊厳を守るとは何なのか、
利用者さんの自尊心を尊重しながら、
自立支援を目指す。

言葉でいうのは簡単ですが、
実際の言葉かけなどは注意が必要ですね。

5.終わりに

不穏になられる方への対応は、
利用者さん一人一人、別の声かけ方法があって難しいのですが、
Nさんのように依存されてしまう方への対応も難しいです。

できるだけご自身でやっていただくようお声がけしますが、
Nさんの場合、まずやってもらいたいという要望から入ってくるため、
それにどう答えるかに職員の交渉能力が試されます。

今回はたまたま、新たな対応策が思いついたので、それで試していきますが、
不穏になられる方への対応など、
一筋縄でいかない事が多いです。

それでも職員は話し合って解決策を考えようと努力するので、
次第に何が問題なのか、どうすればいいのかといった問題解決能力が
磨かれていきます。

困難事例はたくさんあると思いますが、
皆さんも頑張っていきましょう(^O^)/