認知症の利用者を怒らせても仕事が終わればいいという考えは今すぐ捨てろ!

痴呆と言われていた症状が2004年に認知症と名称が変更されてから15年以上が経ちましたが、
現在でも認知症の根治はされていません。

介護職で働くものにとっても避けて通ることのできない認知症を改めて整理して、
どのように対処していくのがいいのか、具体例を交えて書いていきます。

①認知症とは?
②認知症の種類
③認知症の初期症状
④中核症状
⑤周辺症状
⑥認知症への対応方法
・自分が必要な存在だと認識させる
・プライドを傷つけない
・認知症の人のリズムやペースに合わせてあげること
・認知症の人の行動をよく観察する
・健康管理はしっかりと
・介護に完璧を求めない
・やりすぎないことが大切
・五感を使ってコミュニケーションをとる
・趣味や仕事を見つける
・適度に運動する
⑦介護に疲弊しないためにするべきこと

①認知症とは?

認知症とは特定の病名ではなくて、
記憶など情報を使って適切に判断することができなくなっている状態を言います。

以前は痴呆症と言われていましたが、2004年に認知症に変わりました。

日本神経学会では、認知症を
「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、
日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいい、
それが意識障害がないときに見られる」
と定義しています。

物忘れは、たとえば昨日の食事に何を食べたのか忘れたという状態です。

何を食べたのか忘れても食べたことは覚えています。

落ち着いて考えれば徐々に思い出せるのであれば、
物忘れといっていいでしょう。

ですが認知症となると、
食べた内容だけでなく食べたことを忘れてしまい、
お食事を提供していたお盆を下げてから十分と経っていなくても
「自分だけごはんがない!」
と怒ってしまう方もいます。

このように一般的なもの忘れと違い、
認知症では日常生活にも支障が及びます。

②認知症の種類
認知症は、原因となる疾患によって種類がいくつかあります。

・アルツハイマー型認知症
認知症の中で一番多いとされ、
脳に特殊なたんぱく質が溜まると生じると考えられています。

症状としては短期記憶の障害が目立ちます。

例えば、昨日のことは思い出せないが、
若い頃に習得した知識や身のこなしは忘れていないというのが典型です。

・レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多く、
レビー小体という特殊な物質が脳の神経細胞内にできることが原因で、
幻視や記憶障害、起立性低血圧、失神、尿失禁が生じるとされます。

無表情や筋肉がこわばり転倒しやすくなるパーキンソン症状が現れることも特徴です。

・脳血管性認知症
脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)が原因で発症します。

人格の変化は少なく発症前の性格が比較的保たれていますが、
情動失禁(感情失禁)が見られることもあります。

身体のマヒや嚥下(えんげ=食べ物を飲み込むこと)障害、言語障害などが現れます。

特殊なたんぱく質の蓄積が原因と見られるアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症については、
たんぱく質の蓄積を抑えたり除去する薬が開発されて使用されています。

また脳血管性認知症には血管障害を治療する薬が用いられます。

ただし、現時点では薬による治療は認知症の進行を遅らせることが限度といわれます。

介護職は利用者さんの情報をケアプランで確認してから介護を始めますが、
利用者さんが認知症と診断されていなくても認知症の症状が出ることはよくあります。

「金銭、薬の自己管理ができる方か?」
「おひとりでの外出許可が下りているか」
これらが出来ている方であれば、
クリアな方(認知能力に問題のない方)であると言っていいでしょう。

③認知症の初期症状
「同じことを繰り返し言う」「以前はできていたことができなくなる」「同じ服ばかり着る」
「物忘れや探し物の回数が増えるなどが挙げられます。

自分の年齢や「今日は何年何月何日の何曜日か」「今の季節は何か」「今どこにいるか」
などがわからなくなっている様子が見られたら、
認知症の初期症状といえます。

できるだけ早めに専門医の診察を受け、
症状を悪化させないよう対処することが望まれます。

④中核症状
認知症の症状は大きく「中核症状と「周辺症状(BPSD)に分けられます。

中核症状には、「記憶障害」「見当識障害」「失認・失行・失語」「実行機能障害・判断力障害」があります。

認知症の原因となる疾患によって脳細胞が委縮したり変性するために起こるといわれています。

・記憶障害
認知症において記憶は、最近の出来事ほど覚えづらくて、
過去の事は比較的よく覚えている傾向にあります。

なので朝食を召し上がった後、食事の内容はもちろん、食事したこと自体を忘れてしまいます。
薬を飲んだかどうかも忘れてしまうため、服薬治療を受けている場合は注意が必要です。

お食事を召し上がってもう食事がないためお盆を下げると、
その10分後には
「食事がこないわね。あたし食事食べてないよ」
と言われる方がいらっしゃいます。

当初は「お食事は先ほど召し上がっていましたよ」などとお声がけしていましたが、
最近ではお盆を下げないようになりました。

ご自身がお食事を食べ終えたのだという認識をしていただくために、
食後の居室への移動が始まる前まで職員一同、お盆を下げないようにしています。

また、お食事を少し食べた後で、
「誰かに食べられちゃったみたいよ! なんでこんなものが私の前にあるの」
と言われたことも。

さすがに他の食事を用意することはできないため、
「〇〇さんが食べたんですよ」と言うしかありません。
「何言ってんの! 私が食べるわけないじゃない」
そんな場合は、他にお食事は用意出来ないことをお伝えして、
召し上がっていただくようお声がけします。

この例は以前何度か見られましたが、
最近は聞かなくなりました。

自分で薬を飲んだか忘れてしまう方には、
介護職で援助を行っています。
「あたし自分でできるんだけど」
とご立腹される方もいらっしゃいますが、
謝りながらお願いして飲んでいただいています。

「何でこの薬を飲まなくちゃいけないんだ」
と言われる方には、
薬の効果を説明することもありますが、
納得されないことも多いです。

そんなときは、
「お医者様から飲んでくださいって言われているんですよ」
とお医者様というワードで交渉したり、
「息子さんから飲んでほしいって頼まれちゃったんです」
と近親者の名前を出してその方が納得する流れを作るとうまくいく場合はあります。

それでもうまくいかない場合は、
30分とか時間をおいて再度挑戦しましょう。

・見当識障害
日付や曜日、季節、人物、さらには今いる場所がわからないという障害です。

そのため日常生活では時間の約束を守れなくなる、家族の事が認識できなくなる、
外出したら戻れなくなるなどの症状が現れます。

真昼間に「もう夜じゃない」と言われる方がいたり、
夕方なのに「おはようございます」という利用者さんがいたり、
いや職員だっていつでも「おはようございます」って習慣で挨拶する時はありますけど、
利用者さんは分かってて習慣で挨拶したわけではありません。

今が朝か昼か夕方か分からないのです。

なので居室のカーテンは朝になったら必ず開けるようにしています。

日が差せば日中だと肌で感じるように、
もちろん夏場など日差しが眩しい時、
暑い時は半分カーテンを閉めたりレースのカーテンで日差しを抑えたりはしますが、
日中もカーテンを閉めることで昼夜の感覚が分からなくなることを防いでいます。

それでも分からない方がいらっしゃいます。

そんな方には、
「午後ですよ。外が明るいですよ」などとお声がけしています。

ご利用者さんは働いている方がいらっしゃらないので、
今日が何日だとか何曜日だとかいった締め切りとかイベントが基本ありません。

それにより更に日付、曜日の感覚がなくなっているのだと思います。

食事の時に提供されるお薬に、
今日の日付と曜日、朝食後といった文字が掛かれているのを利用者さんに読み上げることで、
今日が何月何日であるのかを伝えています。

もっとも読み上げる最大の理由は誤薬を防ぐためで、
目の前の利用者さん以外の利用者さんの名前を言ったら利用者さんか職員が
「違う」と気づくのを期待しているわけですが。

なお食堂に一応、今日の日付、曜日が掲示されています。

ほとんどの利用者さんがそれに気づいていないでしょうが、
毎日更新されています。

二年ほど前から施設の中から外に出るためには開錠番号を使わなくては開かないようになりました。

それまでは自由に入居者さんも外に出られたため、
ご自身で歩かれる方は外におひとりで出られることのないよう、
職員が玄関のソファでお話を聞きながらお話を聞いたり、
または一旦外でお散歩をして落ち着かれたら施設に戻る対応をしていました。

・失認、失行
失認は五感の感覚が働かない状態です。
たとえば半側空間無視という症状がありますが、
これは大脳半球が障害されて半側からのあらゆる刺激(視覚、聴覚、触覚等)を認識できなくなる症候で、
歩ける方でも半側空間無視ですと片側に障害物があっても気づかないとか、
目の前の片側が視認できないため何かを作業、造形したりする際にも問題が起きたりします。

失行は、手足はマヒしていないのに、
当たり前のようにできていた「歯みがき」や「ネクタイを締める」
といった行動ができない状態のことを指します。

失行と診断が出たわけではないですが、
ご自身で歯磨きができない時がある人がいらっしゃいます。

歯ブラシを渡して、
「歯を磨いていただけますか?」
と言ってもなかなか手が動かず、
「私がやりましょうか?」
と提案しても
「自分で出来るんだよ!」
と言って、手が動かない場合があります。

その場合は少し待って、話を変えてみたりしながら相手の機嫌を伺いながら、
職員に歯ブラシを渡してくれるならこちらで歯磨きを行ったり、
ご自身で手が動き出したらご本人にお任せしたりします。

その動作ができるかは日によって変わるため、
職員はいくつものパターンを想定して対応方法を変えられるようにしましょう。

・実行機能障害、判断力障害
以前は段取り通りにできていた行動や善悪などの判断ができなくなる状態です。

例えば、料理ができなくなったり、
リモコンを使ってテレビのスイッチを入れられなくなる例がよく知られています。

料理は認知症予防に最適だとよく言われます。

何を作るか考えて、材料を調べて、買い出しをして、
食材を調理する際も何から作るか考えることが頭の体操として最適なのです。

なので転倒して足腰を悪くして料理が出来なくなったりすると途端に出来ることが減っていきます。

その方が多趣味であったとして、
足腰が悪くても自分の趣味ができるのであればまた変わるのでしょうが。

これらの障害のために、
認知症の人は過去・現在・未来という連続性の中で自分や物事をとらえることができなくなり、
過去の記憶をたどることも未来を予測することもできず、不安な感覚に陥ってしまいます。

その結果、落ち着かない言動を取ったり、
繰り返し同じ質問をしたりする行動が見られるようになります。

「どうすればいいですか?」と、
事あるごとに聞いてくる方がいらっしゃいました。

その方の中で、自分が今どこにいるのかも、
なぜここにいるのかも分からないからこそ、
「どうしたらいいですか?」といった質問が出るのでしょう。

職員としては「どうしましたか?」とお声がけして、
利用者さんの話を聞くことが大切です。

常にそれができるわけではないにしても、
ほんの少しでも時間を使って話を聞くことがその方の安心につながるからです。

とはいえ、その方がそれで穏やかになられるとは限りません。

数十秒後には同様の質問がされることも十分にありえます。

ここでどのように対応するか、対応できるかで職員の質が試されます。

何分話を聞くか、どれだけ仕事が遅れても大丈夫かを考えながら、対応しましょう。

⑤周辺症状
脳の器質性の病変によって認知機能に障害を持つ人が現実生活に適応しようとしたときに生じます。

具体的には「徘徊」「抑うつ」「失禁・弄便」「幻覚」「妄想」「睡眠障害」「暴言・暴力」などです。

中核症状が何かしら起きるものと違って、周辺症状は起こらない人もいらっしゃいます。

・抑うつ
気分が落ち込んで活動することを嫌がる状態です。

思考や感情が閉鎖的になる中で頑張り続けるとうつ病へと進展することがあります。

「死にたい」
「生きていても仕方がない」
と言われる方がいらっしゃいますが、
よくある対応方法として、話を変えるのが有効です。

その方の昔の話を聞いてもいいですし、
何かお願い事をしてもいいかもしれません。

徐々に落ち着かれたらその方が好きな事を話すと笑顔が見られることでしょう。

・幻覚
実際には外部からの感覚的刺激が与えられていないにもかかわらず、
刺激を受けたと感じたり、幻視や幻聴が起こります。

「蛇がいるの」
「お父さんー!」
など、レビー小体型認知症の方ですとそのように発言されることはあります。

何か危ないことをされているのでなければ、様子を見るといった対応を取ります。

・妄想
例えば、誰も何もしていないのに、「財布を盗まれた」と思い込む状態が妄想です。

いくら「誰も盗んでいない」と説明しても、認知症の本人は容易に理解できません。

「あの職員が盗ったんだ」
と、利用者さんに言われてしまうことはありますが、
職員が利用者さんの私物を取る理由はありません。

高価なものは基本的に居室に置かないでくださいという周知はされていますし、
もし置きたいのであればなくなっても構わないものにしてくださいと了解を取った上で置いていることが殆どです。

なので利用者さんの財布には数千円の現金が入っていたりしますが、
その財布が盗られたという時、
大抵は居室にあったりします。

もしくはご家族さんがその物品を片づけたりして、
本当になくなっている場合もありますが、
ご本人は何日も「盗られたんだ」と言われたりします。

本人の了承ももちろん取った上で撤去、片づけているわけですが、
本人はそのことを覚えていられないので「盗られた」と発言されるわけです。

職員としては、まず無くなったもの、盗られたというものを居室から探します。

ここで見つかれば問題ないですが、
見つからない場合もあります。

その場合はまた探しますと約束して一旦退室します。

利用者さんがそれでも不穏が収まらないようでしたら、
他の職員に対応してもらうというのも手です。

・睡眠障害
眠れなくなる状態のことです。

体内時計を司る神経が異常をきたすことにより起こります。

昼夜逆転が当たり前になると、介護者の負担も大きくなります。

現在、利用者さんで夜間帯に起きて日中に寝てしまう方が何人かいらっしゃいますが、
特に困るのが食事介助をしなくてはいけない方が、
朝食、昼食、夕食の時に傾眠傾向が強くてお食事を食べていただけない場合です。

お声がけをしたり肩を軽くとんとんとたたいても目が開いていただけない場合は、
お食事どころではないので最終的には諦めるしかありません。

・徘徊
あてもなく歩き回ることを指します。
従来は目的もなくさまようと考えられていましたが、
最近では認知症の人は何か目的があってどこかを目指しているという見方もあります。

ご自分の居室はもちろんありながらも、
他のお部屋に入ってしまわれる方がいらっしゃいます。

他の方からしてみれば怖いと思うのも仕方ないですよね。

ただ別の部屋に入る方は、自分の部屋だと思って入る方もいるのです。

現在201にお住まいのOさんは、
色々なお部屋を開けたりされるのですが、
特に開けようとされる部屋があります。

それは自分の部屋と対角線上にある217のお部屋です。

Oさんにとってみれば、部屋番号もなんのその、方向感覚さえ気にしなければ、
自分のお部屋と同じような位置にある217はまさしく自分の部屋なわけで、
ガチャガチャと執拗にドアを開けようとされて、
217の利用者さんはもちろん、ご家族様からも苦情がきています。

しかしOさんご本人は悪いとも思っていませんし、
自分のお部屋ですから何ら悪びれる理由はないわけです。

職員の対応としては、
217は特に必ず施錠するようにすることと、
217のご利用者さんが部屋から出てきたらすかさず鍵を掛けましょうという取り決めがされました。

とはいえいつ217の利用者さんが居室から出てくるかは分かりませんので、
気づいたら鍵を掛けるという対応しかできません。

よって、たまにOさんが217のベッドで寝ていたりします。

そんなOさんをなだめすかしたりしながらお部屋から出ていただく。

素直に従ってくれることはまずなくて、
それでも別の人のお部屋ですのですぐさま出ていただくしか選択肢はないわけです。

Oさんは怒ってしまわれる場合もありますが、
とはいえ出ていただくしかないのです。

徘徊とは少し話が変わってしまいましたが、
Oさんが徘徊して一番困るのは、
別の方のお部屋に入ってしまうという点を思い出したので、記載しました。

その他、徘徊で困るのは離設されてしまうケースです。

離設とは施設を出て行ってしまうということで、
いつのまにか入居者さんがいないと発覚したら、
実はベランダの外を裸でさまよっていたり、
施設の非常口のドアの鍵が壊れていて非常階段から離設した利用者さんがいたり、
デイサービスで家の玄関の鍵をかけていたのですが、
帰りたい利用者さんのために別の利用者さんが鍵をあけてしまうという
連係プレイにより離設が成功するパターンもありました。

上記例からも、徘徊自体は問題ではなくて、
離設してしまう場合の方が職員としては困りますね。

・異食
理解力の低下により、ティッシュやおしぼり、お箸を乗せる箸置き、
便などを口に入れてしまう異食という行動があります。

現施設でも異食をされる方がいらっしゃいます。

その方には箸置き、おしぼりは置かないようにしていますし、
ティッシュを渡したら使い終わった段階で回収しています。

・失禁、弄便
意思に沿わず便をもらしてしまうことです。
弄便は、排泄した便をいじり壁や床などにこすりつけたりする行為です。

陰部がかゆくてかいてしまい、便が手に付着してベッド周りが汚れるという場合や、
便が出た違和感で陰部を触ってしまうという場合などがあります。

あまりにも弄便が酷い方にはご家族さんの了承を得た上で、
バスタオルを使って腹巻きをさせていただいています。

・暴言、暴力
いろいろなことが理解できなくなっている焦燥感や怒りが、
本人または他者に向けた攻撃的行為となって現れることがあります。

普通の人なら我慢できることでも、
認知症によって感情を抑えられなくなっていると考えられています。

一番に優先するべきは、他の入居者さんに危害が及ばないようにすることです。
その利用者さんを他の場所にお連れしたりして対応しています。

⑥認知症への対応方法

では改めて、認知症の人への対応についてご紹介します。

自分が必要な存在だと認識させる

対応方法としては、自分が必要な存在だと認識させることです。
本人ができることは何かを把握してできることをお願いすると、
達成感や互いの信頼感につながります。

そのときは「ありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えましょう。

少し大げさに褒めるくらいで良いかもしれません。

以前デイサービスでは利用者さんに一緒に布団カバーをたたんでもらうのをしていました。

特養では乾燥した洗濯物を畳む仕事を利用者さんにお願いしていました。

今の有料老人ホームでもたまに洗濯物のたたむ仕事を利用者さんにお願いすることはあります。
快く手伝ってくれる利用者さんにはいつも助かっています。

プライドを傷つけない

次にプライドを傷つけないことも大事です。

「叱らない」「指摘しない」「否定・議論しない」よう注意しましょう。

できるだけ相手の意思を受け止めて汲み取るようにして、
穏やかな声で対応しましょう。

何度も言い聞かせようとしても、
認知症の人には意味がわからず反感を抱かせることにつながります。

利用者さんに声を荒げてしまう場合は、
一旦その場から離れるようにしてみましょう。

職員が冷静でないと利用者さんはさらに怒ってしまいます。

別の職員がいるならその方に任せるのも手です。

自分でできなかったことを悔しがる前に、

自分は怒って叱るという行動パターンを他の職員を呼ぶことで回避できたのだと評価しましょう。

怒ってしまう人は自分のやらなくてはいけないことを優先したり、
自分の気に入らないことをどうしても許せなかったりしますが、
利用者さんにとっては職員のやりたいことなど従う理由はないのですから、
怒っている職員と一緒にいるだけでも不快、不愉快、
そして利用者さんも怒ってしまうという負の連鎖が起こります。

それを断ち切るためにはまず職員が怒る流れから脱却しなくてはいけません。

認知症の人のリズムやペースに合わせてあげること

また、なるべく環境を変えないようにして、人間関係、生活環境、
生活習慣を認知症の人のリズムやペースに合わせてあげることも大切です。

孤独にさせないで人と関わる時間を定期的に設けてあげましょう。

在宅であれば時々話しかけたり、
施設であれば他の入所者と顔を合わせ、
交流する機会を設けると良いでしょう。

孤独は不安感を募らせ、不安感は認知症を悪化させます。

今の施設は各入居者さんごとに居室で生活されています。

朝食、昼食、夕食の時に皆さんが一緒になりますが、
それ以外ですと居室で過ごされることが殆どです。

認知もクリアで穏やかに生活されている方がいる一方で、
度々ナースコールを押して寂しさを紛らわしている方もいます。

「用事はないです」といいながらもナースコールを押す利用者さんがいたり、
「どうすればいいですか?」と何度もナースコールで聞いてくる方がいたり、
どの方も職員に不安を訴えたり悩み事を相談されたりします。

たびたび続く傾聴は職員にとっても負担となりますが、
職員が向き合わなければその利用者さんはずっとその問題に悩まされることになります。

唯一の答えを知っているかもしれないのが職員なのです。

その方が本当に困っていること、訴えたいことは何か考えましょう。

認知症の人の行動をよく観察する

認知症の人の行動をよく観察することも重要です。

なんとなくそわそわしていたらトイレに行きたそうだとか、
職員の対応を嫌がっていないか反応に注意するなど、
さまざまな変化を見逃さないよう注意してみてください。

健康管理はしっかりと

特別養護老人ホームや有料老人ホームですと看護師や介護士がいますので、
利用者さんの毎日の状態、
変化に複数の目でチェックが入りますので何かあったら対応しやすいですが、
在宅では要介護者の健康管理が十分に見られるとは言えません。

認知症になると、
自分での健康管理が難しくなります。

どこが痛むのか、いつから痛くなったのか、
どこが気持ち悪いのか、なぜ気持ち悪くなったのか心当たりは?
いつもと感覚が違うけど、それを言語化できなかったり、
分からない事が分からないという状況に陥ります。

そうなると自分で薬を正しい時間帯で飲むことも難しくなり、
適切な量の食事や運動も一人では難しくなってきます。

時々散歩に出かけて気分転換をするとともに、
足腰を鍛えていくことが本人の運動にもなりますし、
新たな刺激による認知症の症状緩和や、
不眠の解消・生活リズムの乱れなどを防ぐことができます。

弄便やトイレの失敗も排泄リズムなどを確認し、
2~3時間ごとに声掛けしたり、
本人がそわそわしだしたら先回りして声がけをすることで防げることがあります。

介護に完璧を求めない

認知症介護は、介護の中でも一番難しいと私は思っています。

というのは要介護5の方であれば全介助が必要だし、
定期的な排泄などが必要となりますが、
徘徊や離設、転倒の心配はないからです。

弄便やオムツ弄りしたまま歩き出されて床が便塗れというのも、
要介護者が歩けるからそうなるわけであり、
排便管理、排泄管理を適正にする努力ももちろん必要ですが、
いつ便が出るかは本人しか分からないというか、
本人にすら分からないというのが現状でしょう。

よって認知症介護は介護の中でも特に色々な事を考えなくてはいけないため、
理想的な介護を目指していた方にとって現実とのギャップに悩み、
投げ出したくなってしまうかもしれません。

もし介護者がたった一人で要介護者の介護をしていたとしたら、
時間的にも労力的にも余裕がなくなって疲弊するのは時間の問題ですから、
周囲のサポートを頼っていきましょう。

家族で協力してくれる人を探すとか、
地域包括支援センターに相談するとか、
ケアマネに相談するとか誰かに相談してみましょう。

何かしらアドバイスをくれるかもしれません。

やりすぎないことが大切

これは施設でも同様の事が言えますが、
本人が出来ることを介護者がやってしまわないように注意してください。

自分で着替えが出来るのに、
時間がかかるからと介護者が手伝ってしまうとか、
自分で食べられるのに、
時間がかかるからと言って介護者が手伝っていると、
次第に本人は自分が手を動かすという事をできなくなっていきます。

本来であれば自分でできたはずの動作が、
介護者が手伝ってしまうことで「やらなくていいこと」になってしまうと、次第にそれはできないことになっていくのです。

本人が出来ることをできるだけやっていただくことを自立支援といいますが、
介護者が手伝ってしまいその能力を奪うことで、
本人の認知機能もより悪化してしまいます。

本人ができることをスムーズに進められるように見守りしたり、
声掛けしたり、一部手伝ったりと、
あくまでも本人が自分ですることを見守ることが大切です。

五感を使ってコミュニケーションをとる

人はコミュニケーションをとる際、言葉だけではなく「五感」を使ってさまざまな情報を入手し、利用しています。

認知症の人は、ほかの人が話した内容を処理する能力が衰えているので、
それを補うために五感の情報を活用しています。

喋っていることが分からないから相手の顔を見るとか、
声のトーンで怒っているのかを読み取るとか、
相手がどこから離しているかで自分とどれだけ親しくなろうとしているかを感じたり。

そんな認知症の方に接するときは、
五感を活用したコミュニケーションが大事です。

声の大きさを工夫したり、
少し大げさなくらいに身振りや手ぶりを加えるのも有効です。

また、顔を合わせて、表情豊かに話すと相手に伝わりやすくなります。

どうすればいいかわからない、
といった不安を抱えた認知症の方に対して、
仏頂面や怒った顔で接して良い事は何もありません。

これから楽しい事をしましょうとか、
〇〇をしたほうがあなたのためになると思いますよ、
といった提案をして、
本人が安心して生活していけるように気を配りましょう。

趣味や仕事を見つける

何もすることがなく、話し相手もいなければ、
「自分の居場所ではない」
「ここはどこだ」
と疑いはじめ、外に出ようとしがちになります。

住み慣れた家ではなく、
ご家族さんが住んでいる家に引っ越しされたのであれば尚更です。

ご本人が今まで何が得意だったのか、
何が好きで趣味を続けていたのかを把握した上で、
一緒に作業をしてもらえないかとお願いしてみましょう。

前の特別養護老人ホームでは一部の利用者さんに、
洗った雑巾を畳む仕事をお任せしていましたし、
その前のデイサービスでは日々の布団の片づけを利用者さんと一緒にしていました。

自分は役に立っているという感覚が自己肯定感に繋がりますし、
自分の好きな事を好きなようにできているとしたら、
それは充実した日々となることでしょう。

適度に運動する

何もしないで同じところにじっとしているのは高齢者であろうと、
若い人であろうと皆等しくつらいというのは今回の自粛要請で嫌というほど身に染みたと思います。

高齢者もじっとしていたらエネルギーがありあまってしまうため、
「徘徊」につながることがあります。

散歩をするとか、家の中でできるストレッチをするとか、
何かしら運動をすることで心地よい充実感や疲労感を味わうことができて、
外出衝動が改善する場合があります。

⑦介護に疲弊しないためにするべきこと

在宅で認知症の人を介護する場合、
家族への身心の負担が大きく疲労が溜まります。

介護疲れしないための工夫についてご紹介します。

一番大切なのは一人で抱え込まずに周囲を頼ることです。

家族介護者は介護の専門家ではないのですから、
一人でできないことがあって当たり前です。

介護の専門家であっても、
一人でするのは心身ともに多大な負担がかかるため、
家族のほかのメンバーや親戚に相談しましょう。

また、専門機関に相談することも大切です。

保健センター、地域包括支援センター、在宅介護支援センターなど
さまざまな窓口で専門家に相談することができます。

自治体や福祉団体などが開催する介護教室に参加したり、
ユーチューブで介護の動画から学ぶ方法もあります。

介護には毎日続きますので休みがありませんが、
介護する側にも一時的休止(レスパイト)は必須です。

そのための支援をレスパイトサービスといい、
介護保険を利用して介護サービスを受けることができます。

在宅で家族介護をする場合、
ホームヘルパーによる訪問介護を利用すれば、
家族介護者にとって一時的な休息になります。

サービス内容は排泄、入浴などの身体介護、
料理、洗濯などの生活援助です。

また、生活圏の地域にある介護事業所の利用者となって通所し、
必要なときは宿泊もできる「小規模多機能型居宅介護」というサービスもあります。

「認知症対応型通所介護」は認知症の65歳以上の要介護者がデイサービスセンターなどを利用できるというものです。

一方、「認知症対応型共同生活介護」なら、グループホームで認知症の人たちが共同生活を送ることができます。

認知症の要介護者に対応している介護施設としては、
特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、
介護療養型医療施設(2017年度末廃止)があります。

要介護度や本人の意思など状況に応じて効果的な利用を検討してください。
どのサービスを利用したらいいかは、
ケアマネや地域包括支援センターで相談することで適切なアドバイスをくれるはずですので、
決まったケアマネがいるならばケアマネと相談しましょう。

決まったケアマネがいないなら、
地域包括支援センターに相談しましょう。

以上、認知症にまつわる様々な症状についてまとめてみました。

認知症は十人十色で、その利用者さん毎に症状が異なったり、
またそこから出てくる訴えも変わってくることでしょうが、
職員に求められるスキルが、傾聴、受容、共感、尊重であることは変わりません。

その方の事、誰よりも知っていますか?

既往歴、現病歴、ADLはもちろん、過去なにをされてきて、どのような生活をしてきたのか。

その方の事を知ろうともしないで、共感できるわけがありません。

ケアプランは全部読みましたか? 覚えていますか? 説明できますか?

共感できていないから受容できない、と思っているのなら、まず自分自身が利用者さんを知る努力をしましょう。

全員でなくてもいいです。まずは一人から始めましょう。

知ろうとする努力もせずに貴方の感性が磨かれることはありません。

自戒を込めて。